第 07 章「展転(てんでん)」
第 02 節「魔天女ヒユル」
大きな腕に第三部隊の一人が掴まれそうになった。
隊長ウタックは、死にもの狂いで2本の腕に躍り掛かり、部下を助け出した。
手の平に打撃を与えたが、そのまま掬(すく)い上げられそうになる。
両手で弄ばれれば、死に至りかねない。
そこへハッボスが飛び込んだ。
彼は大刀を支えにして、潰されないよう、必死でこらえた。
ラモーは大きな釘のようなものが刺さって痛いので、手を離した。
ウタックの、恐怖を凌駕した攻撃心が、強突となって巨人の手の平を捉える。
更に追撃は手首に振り下ろされていた。
是が非でもウタックを捕まえようと、ラモーはハッボスを払い除けて掴みかかった。
ウタックが右手に握り締められるのを見て、刃のない隊員たちのサーベルが、次々にラモーの右手首に斬りかかる。
隊長は助け出されたが、左のパンチが飛んできた。
隊員たちは武器で打撃を防ぎながら、後方へ飛ばされている。
「手足を打つばかりじゃあ、奴は倒せねえ・・・!!
よしっ、引くぞっ!!」
隊員たちは戦況の不利は分かっていたが、ウタックが退却を指示したことを一瞬、疑った。
「俺の命令が聞けねえか!!」
両部隊が、一斉に走り出した。
先頭きって走るウタックの方へ続いた。
それはアミュ=ロヴァへまっすぐの道ではなく、少し南へ逸れていた。
怪人ラモーも追ってきた。
両手と両足に打撃を受けているので、走りづらいらしい。
その上、先の姿に比べて大きいので、簡単に息が上がった。
依然として足元が悪く、LIFE騎士たちは泥水を跳ね上げながら走った。
ラモーは幾度となく滑った。
突然、ウタックは一人で引き返し、ラモーの勢いよく振り出された脛目掛けて、両手持ちに構えたサーベルから、尋常でない斬撃を叩き込んだ。
巨人は飛び上がって前へ倒れ、泥水にまみれた。
隊長に続いて第三部隊の騎士たちが、そして第十部隊が、一斉に躍り掛かった。
「手加減はいらねえ!
こいつの元の姿が現れるまで、嫌って言うほど痛めつけてやれ!!」