The story of "LIFE"

第 07 章「展転(てんでん)」
第 02 節「魔天女ヒユル」

第 01 話
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悪魔使いフィフノスは、自ら召喚した悪魔「カコラシューユ=ニサーヤ」と闘神ヱイユの決着を見ずしてその場から立ち去っていた。

彼はもうテビマワに用がなかった。
また、闇の都市ザベラムへ急ぐ理由もなかった。

羊頭神「エンリツァーカ=ギール」も馬頭神「モルパイェ=フューズ」もケプカスに預けてきてしまった。
その上ニサーヤは、ヱイユとの対戦で完全に覚醒してしまったらしく、おそらく彼の元へは帰ってこないだろう。

当分の暇を得たように、放浪癖で、これといって何もないテビマワ~ザベラム間の北方をぶらついていたのである。

時々、何を考えるのか、吹き出して笑い転げたりする。
かと思えば急に激怒して、ぶつぶつ解らない言葉を口走った。

いずれも魔法によるものだが、この日はテビマワ周辺で天変地異が続いている。
そのためだろう、午後になっても日は差してこなかった。

フィフノスは、LIFE騎士団がどこに配備されているか、それとなく知っていた。
だが彼は、無策にLIFEと関わるのを嫌った。

ヱイユは執拗に追ってきたので、最初は応じていたが、だんだんうっとうしくなっていたところだった。

面白半分で作った3体の悪魔も、今では悪魔結社マーラの主力兵器とみなされており、自分が所持することで面倒に巻き込まれるのも嫌になっている。

今、全ての悪魔を手放してみると、戦線に戻る必要はなく、本来責任感などない男だったので、すっかり気が楽になった。

地べたに寝転んでみたり、起き上がって天に向かい何かを叫んでみたりと、奇怪な行動を繰り返していた。

そこへ、全身至る所に飾り物をつけた若い女が現れて、彼の挙動には全く興味のない様子で、大きな声を出した。

「おい、フィフノス!
あたしに『ニサーヤ』をくれるって話は、どうなった?」

びくっと、立ち上がって硬直したようになったフィフノスだが、この滑稽な反応に笑いもせず、女はそのことだけ聞いた。

悪魔使いは困惑した調子で、俯いて首を振りながらぶつぶつ言っていた。

女には言葉が通じるわけでもないようだが、フィフノスの言葉を訳すならば、『ニサーヤは自らの意思で行動していて、どこへ行ったか分からない』ということらしかった。

女は名を「ヒユル」といった。

怒りを露わにするヒユルを見て、フィフノスはケラケラと笑った。

すると、いつの間にか彼女の姿は見えなくなっていた。
悪魔「カコラシューユ=ニサーヤ」を、本気で探しに行ったのであろうか。

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