第 07 章「展転(てんでん)」
第 01 節「業障(ごうしょう)の苦(く)」
『全ての動作は、自分が神であることを証明するためらしいな。
どれほどの技術を使って生み出されたか知らないが、つぎはぎだらけの合成生物に、“LIFE”が敗れるわけにはいかない・・・!!』
ヱイユは、ニサーヤを中心とした「正三角形」を描くように、アーダ、ガルーダ、ゲルエンジ=ニルを召喚した。
方陣といえば「五芒星」、あるいは「六芒星」であるが、この「トライアングル」にも、魔法を増幅させる力がある。
各々「四属性」の魔力を放出することで充填が成った。
カコラシューユ=ニサーヤは、体勢は崩さなかったが、両足が大地に引き摺り込まれてしまって、身動きが取れない。
更に、大地に敷いた「正三角形」は、上空でヱイユが詠唱を始めたことにより、「正四面体」となった。
その重心部分に大きな重力の球体が発動すると、激しく渦巻きながらニサーヤを飲み込んでいく。
重力体は、すぐ外側に起こった「攻撃型ロニネ」の収縮に伴い、急速に減衰した。
これは魔法使いムヴィアの「封印」である。
方陣からの強大な魔力の増幅作用によって、ヱイユの発動は完成するはずだった。
しかし、最後の一点となってまさに消えようとした瞬間、増幅の拠り所であった「正四面体」がバランスを崩し、攻撃型ロニネは消滅を遂げられなかったのである。
押し込められて小さくなったニサーヤは、ヱイユの詠唱を跳ね除けた。
溢れる魔力が、体の外側に二回りも三回りもある虚像を描き出し、実際、ニサーヤはみるみる大きくなっていった。
「「慢心を抱く者よ。
己を知れ・・・。」」
方陣で増幅したとはいえ、ヱイユはかなり消耗している。
「キュキュラ(総力)」を用いた発動が半(なか)ばで中断されたからこそわずかに力は残っているが、ニサーヤとまともにやりあえる状態にはない。
ふと、時間が止まったような感覚に囚われる。
自分たちを狙うニサーヤの向こうに、前へ屈(かが)んで笑い転げるフィフノスの姿が見えたのだ。
「貴様、俺を足止めして、テビマワを・・・?
うおおお!!」
異常な魔力の持ち主は、「キュキュラ」を2度、撃てるという。
ヱイユはニサーヤがインツァラを撃ってくるのに対抗して、こちらからも総力で撃ち返した。
威力の相殺ができればよかったものを、共倒れとなった。
ニサーヤは魔法陣の中へ消え、ヱイユが呼んだ魔獣たちもアーダを残して消え去った。
ヱイユは致命的なダメージを受け、空高く吹き飛ばされて、アーダに守られながら、東へ東へ、流れていってしまった。