第 07 章「展転(てんでん)」
第 01 節「業障(ごうしょう)の苦(く)」
魔法都市国レボーヌ=ソォラと中立自由市国ミルゼオの国境手前、テビマワからは南方、アミュ=ロヴァからは西方にあたる、LIFE騎士団の野営地でも悪魔結社マーラとの応酬があった。
ここにはマシンクの第五・長槍部隊と、ラッツピンの第七・双剣部隊が駐屯していた。
LIFE騎士団は、軍師スヰフォスから、ミルゼオ国へ絶対にマーラを侵入させてはならないと厳命されている。
第五部隊がマーラを迎え撃つ体勢を取り、第七部隊は後方に回って挟撃を狙っていた。
逃げ落ちる50名ほどの黒ローブの術士たちは、前方にマシンクの部隊を見ると、勢いに任せて襲い掛かってきた。
対するLIFE騎士団は各部隊が精鋭7名という少人数だ。
マーラの前団がマシンクの長槍部隊に倒され、後続からの、魔法による集中攻撃がまさに行われようとした瞬間、反対側からラッツピンと部下6名が鬨の声を上げた。
振り向く殿(しんがり)は、あっという間に討たれ、すでに30数名となった黒ローブの一団が、前へ、後ろへ、勢力分散してしまい、戦意を失って逃亡を試みる者も出た。
詠唱には時間がかかるため、死にもの狂いとなった術士たちは魔法を立ち上げるだけの余裕がもはやない。
身につけた刃物や杖など、武器を振り回すも、槍の達人と双剣戦法の達人たちを前にして、一撃を加えることさえできなかった。
こうしてマーラの逃亡者たちは全員が痛手を被(こうむ)って倒れ尽くした。
だが元よりLIFE騎士団の武器からは殺傷性能が除去されていて、自身と、仲間と、敵の生命までも守るという目的に特化されていた。
戦闘不能となった術士たちは、2台の大型馬車に、身動きできないくらいぎゅうぎゅうに詰め込まれ、騎士2名ずつが見張りとして付けられた。
万一、殺傷を働く者が出てはいけないと、両手は縛(ばく)され、目は覆われた。
この戦地とアミュ=ロヴァの中間地点にも、やはりナズテインの部下が待機している。
そこへ早馬を飛ばし、次の馬車を手配させるのだ。
結局、テビマワ~ザベラム間では、最初の約30名に続いて、もう30名ほどが捕縛され、ミルゼオ国境への道では50名が捕らえられた後、更に20名ほどが迎撃された。
そして皆、アミュ=ロヴァへ護送されていった。
他方、テビマワからモアブルグへ通じる道には往来がなく、これと合流するザベラムからの道も、至って静かだったのである。
ザベラムの沈黙は不気味だ。
一体、どれくらいの造営が為され、何人規模の術士が潜伏しているのだろう。
また、姿を見せないマーラの首領たちは今、どこにいるのか。