第 07 章「展転(てんでん)」
第 01 節「業障(ごうしょう)の苦(く)」
第三部隊長ウタックは、6人の隊員と煙草を吹かしていた。
彼らの持ち場である、アミュ=ロヴァとテビマワの中間地点に到着し、配備を命ぜられた正午まで、30分ほど余裕があったのである。
少し離れた場所で小会議を行っていたハッボスの第十部隊も合流してきた。
「ウタック。
それぞれ斥候を立てないか?
ゆうべと今朝、会戦があったということ以外、情報がなさすぎる。」
一服する手を下ろして、渋い表情のウタックがハッボスの方を向いた。
今ではすっかりLIFEに信服している彼も、古くからの習慣である喫煙はやめられないらしい。
「ああ、そうだな。
必ず12時には一人立てるから、待ってくれ。
お前も、ほら、どうだ?」
煙草を差し出されたが、ハッボスには喫煙の習慣がない。
第十部隊が小会議をしていたのと同じ目的で、第三部隊は一服しているのである。
「隊長、私が見てまいりましょう。
20分で戻ります。」
「おう、もういいのか?
すまないな。
もしも敵と遭遇したら、上手く煙に撒いて来い。」
そう言ってウタックは煙を吐き出しながら渦巻かせ、皆を笑わせた。
両部隊から1名ずつが馬に乗ってテビマワ方面へ出かけていく。
「一人が一人を倒すのは早いが、一人が複数から狙われたら?」
「攻撃の順番を決めておくさ。
最初の一人が敵の一人を捕らえたら、次の一人は最初の一人を狙っている敵を一人引き受ける。
三番目の攻め手は二番目の攻め手を狙っている奴を叩くんだ。
こうやって、倒したら次、倒したら次、と戦況を把握しながら、仲間を狙っている奴を潰していこう。」
どちらの部隊も一撃の攻撃力に抜きん出た隊員から成る。
特に第三部隊のメンバーは動きも俊敏だ。
「ナズテインの奴、魔法を吸収する武器防具を届けるなんて言ってたが、決戦までに間に合いそうもないな。
騎士は騎士らしく、この身一つで受けて立とうじゃないか。」
ハッボスは力は強いが気性の荒い方ではない。
彼と対象的に血気盛んだったウタックが、性格的に丸くなってきただけでなく、作戦の上でも実力の上でも頼もしい存在となったことは、ノイとLIFEのおかげであり、軍師スヰフォスのおかげでもある。
「第十部隊はどうするんだ?」
「大刀は防御力もある。
突っ込んで、何人いようがまとめて倒す。」
「遠くから撃ってくるかもしれないぜ?」
「その場合は馬で敵の群に突っ込むさ。」
「ああ、それでスヰフォス殿は、馬にも防具を付けさせたのか。」