The story of "LIFE"

第 07 章「展転(てんでん)」
第 01 節「業障(ごうしょう)の苦(く)」

第 09 話
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強風と豪雨は止まなかった。

空(そら)に浮かべられた憐れな殺戮者たちは、風に煽られても漂うことすらできず、ひたすら落下を恐れ、雷雲が湧くことを恐れ、足が地に着いていない不安から、言葉でない声を発し続けた。

マーラの術士たちはテビマワの上空に留(とど)め置き、内衛士団の兵士たちは昨夜のキャンプ付近の上空まで風に吹かせて後退させた。

城塞の中に、悪魔使いフィフノスがいないとも限らない。
身動きの取れない人々を、その餌食にするわけにはいかないからだ。

ヱイユは、昼頃になるであろう、LIFE騎士団の配備が済むまで、3時間ほどかけて、彼らを地上に下ろしてやるつもりだった。

宿業深き人々は、恐怖に苛まれ、強い雨に打たれながら、徐々にではあるが下降していった。


アミュ=ロヴァでは、8時から40分ほどの会議の後、LIFE騎士団の出撃準備が進められていた。

レンガー率いる第二・攻守部隊、ヌザルム率いる第六・重装部隊は、少数民族地帯カーサ=ゴ=スーダ付近の守護へ。
マシンク率いる第五・長槍部隊と、ラッツピン率いる第七・双剣部隊はモアブルグの守護へ。
この4部隊は、駐屯地が遠く、戦役が終わるまで現地で過ごさなければならない。
箱馬車を借りて、テントや食糧を携えた。

ただしマシンクの部隊だけは別の役を帯びて引き返す可能性も示されている。

オルグスの第四・棍棒部隊と、バグティムトの第八・格闘部隊は、昨日歩いて来た道ではあるが、アミュ=ロヴァとミルゼオの国境付近まで戻って、悪魔結社マーラの南下を防ぐ。
彼らも東方の守護にあたる部隊と同様、馬車に寝具と食糧などを積み込んでいた。

焼け跡となった闇の都市ザベラムに、新しいマーラのアジトができつつあるという。

そのザベラムと、テビマワが互いに連絡を取れぬよう、分断策に走るのがレヂョウの第九・捕縛部隊と、密偵組織「サウォーヌ」のメンバー5人だ。

魔法剣士ヤエの他、飛び道具と縄の扱いに長けたレンジャーのピスム、短剣2本を操る舞踏剣士ベーミラ、三人は女性である。
男性は、格闘パフォーマーのデグランと、和刀に爆薬を用いる隠密ワダイルの二人だった。

そして、アミュ=ロヴァ側に待機してマーラからの追撃を阻んだり、内衛士団の逃走を支援するのがウタックの第三・サーベル部隊と、ハッボスの第十・大刀部隊である。

本営は古都アミュ=ロヴァの旧リザブーグ大使館に置き、ナズテインの第一・斥候庶務部隊は軍師スヰフォスとともに、ここで戦況を把握しながら各所に正確な手を打たなければならない。

LIFE騎士団は元王国騎士出身者が大半で、結成後も実践的な訓練を積んできているため、何者も恐れることはなかったが、どうしても武器と武器の戦いに慣れており、魔法使いを相手に剣を振るった経験には乏しかった。

しかし各隊7名という少数から成る10の部隊は、それぞれが、あらゆる場面を想定しての防衛策・回避策を持っている。

あとは実戦でどう出るか、生命を賭した真剣勝負となることに変わりはない。

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