The story of "LIFE"

第 07 章「展転(てんでん)」
第 01 節「業障(ごうしょう)の苦(く)」

第 07 話
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『竜巻では破壊力が高過ぎる。
雷雨を呼ぶか、風を使うか・・・。』

いったん止んでいた雨が、ものすごい音を立てて降り始めた。

遠雷が鳴り渡っている。

テビマワの砦を壊すわけにはいかない。
内衛士団の殺戮に加担してしまうからだ。

そこで、舞う程度の強風を起こすにとどめ、大地にはグラグラと緩い振動を与え続けてみた。

攻撃用の窓は風雨が吹き込んだために皆閉められ、早くも裏口からは術士たちが逃げようとしていた。

『そっちへ行かれては困る!
騎士団が着くまで、しばらく中にいてもらおう。』

後方には、真っ黒い翼を持った巨鳥が現れ、行く手を阻むようにして地上へ降り立っていた。

言うまでもなくヱイユが召喚したガルーダであるが、風を操りながら両翼を広げ、絶叫に似た大音声(おんじょう)を放つと、マーラの術士たちは後退(あとずさ)り、引き返していき、次から次から出てくる仲間たちにぶつかったり、押し合ったりと、恐怖によるパニック状態を現出した。

じれったくなって赤竜ヱイユは砦壁と本棟の間にある広場へ術士たちを誘導する目的で、正面の扉を蹴破った。
裏口から押し返された人々が、上の階へは戻れず、前の広場に雪崩れ込んだものの、恐ろしい竜がいると知っていたので、ここも押し合いのパニックとなった。

『同士討ちもまずい・・・。』

前方には内衛士団の法皇軍が見えてきた。

危険極まりないのを承知で、ここは一旦、両陣営を相見(あいまみ)えさせるのがいい。

突如、爆発が起こった。
砦壁の門、一箇所が、ヱイユのインツァラによって開け放たれたのだ。

広場へ溢れていたマーラの術士たちは、向こうにアミュ=ロヴァ軍を見、いよいよ攻め込まれると知って、躍起になってきたようだ。

テビマワの砦からは大勢、黒ローブの術士たちが喚声を上げて流れ出た。

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