The story of "LIFE"

第 07 章「展転(てんでん)」
第 01 節「業障(ごうしょう)の苦(く)」

第 05 話
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ゲルエンジ=ニルは地表付近まで顔を近付けてギョロギョロと兵士たちを睨み回した。

とっさの判断で戦意を示した者はいない。
全軍が逃げ腰となった。

大蛇のような赤竜が雨天を衝いて首を擡(もた)げると、一帯にはいくつもの旋風が巻き起こった。

「どこへ行く!
一斉に撃て!!」

法皇の怒号が鳴り響いた。

魔法を使える者は振り返って、大慌てで詠唱を始めた。
効けばいいが、だめなら逃げ遅れたくない。

壊走状態のパニックで、従軍を不本意としていた士卒は逃げ退(すさ)った。

ゲルエンジ=ニルを召喚中のヱイユは、退路に立ってアミュ=ロヴァの方角を示すようにした。

「忘れるな!
あの竜は“LIFE”の守護神だ。
お前達は幸運にも、導かれているんだぞ。
早く帰れ、家族の元へ!!」

200人ほどの軍だったが、まだ50人近い衛士たちは残って戦っていた。
本格的にやり合わせるのは双方に不益だ。

立て続けの落雷があって、人々が目を覆っている間に、竜神は昇天し、雲間へ姿を消してしまった。

「おおー!
撃退したぞ。」
「あれほどの魔物を降伏させたのだ、テビマワなど何になろう!」
「臆病者は去った。
ちょうど1隊分の人数だけ残っている。
精鋭でいくんだ!」

再び法皇が叫ぶ。

「古都アミュ=ロヴァとレボーヌ=ソォラの勇士たちよ!
次は失敗が許されぬ。
全員が屍(かばね)となってもテビマワを落とすのだ。」

狂気の雄叫びが連呼されると、雨は弱まり、強い風が吹き始めた。

上空に身を移したヱイユは次の手を考えている。

「46人いるな。
LIFE騎士団が持ち場に着くまで、もう少し時間を稼いでおきたい。
どうあっても失敗してもらうぜ。」

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