The story of "LIFE"

第 06 章「使命」
第 03 節「総力戦」

第 16 話
前へ 戻る 次へ

イル=デュゴスの身動きを封じる役目をアーダに代わってもらったヱイユは、地上へ降りて人々に語りかけた。

アーダの登場で沸いた今しか聞かせることはできまい。

「古都アミュ=ロヴァの民よ!
この国に巣くう魔性の権化が、いかに醜悪であるか、目に焼き付けただろう。
こいつは一体、どこから生まれてきたと思う?」

一瞬、水を打ったように静まり返った。

「貴族だ!
金を蓄えこんでいるからだ!」
「法の権威を振り翳して、魔法を欲望のために利用するからだ!」
「そうだ、宮殿の奴らが悪いんだ!」
「隠れた不正が実体化したんだ!」

あまり多くの種類の意見は上がらなかったが、何が悪いかと聞かれれば、歴代法皇や貴族議会政治が悪いと口々に言うしかない。

「俺はよその国を見ていて思う。
レボーヌ=ソォラは軍事路線を踏まないし、国内に危険勢力があると知れば軍隊を派遣して潰そうとする。
たしかに国家としての行動には筋が通っていて、別段おかしいとはいえない。」

アミュ=ロヴァ市民たちもそれには同感せざるをえなかった。
不満を言えといわれれば出せるが、これといって議会政治に対しても、権力の象徴である法皇に対しても、すぐに取り下げなければならない理由は見つからないのである。

「いくら政治体制を変えたところで、魔性は国家に巣くうものではなく、人間の生命に巣くうものだ。
まず、各人が我が生命の魔性に打ち勝つ覚悟を必要とする。」

ゴクリと唾を飲み込む間があった。
イル=デュゴスを生み出す根源悪が、自分自身の中にあると指摘されたも同然だ。

「人は皆、絶大な権力を握ると狂うものだ。
過去におかしくなった、特定の有力者たちだけに限る問題では決してないぞ。
俺たち一人一人が、人間の弱点である金や権力や繁栄といった誘惑に、実際に直面した時、それらの悪魔を跳ね除け、皆で手を取り合って正しい未来を作っていけるかどうかだ。」

問い糺す口調ではない。
己心に潜む悪魔と戦う勇気を、奮い起こそう、鼓舞するんだというヱイユの真剣さ、そしてどこかに優しさを感じる。

「ここで合意しただけでは不十分だ。
魔法を使う者は“LIFE”を心肝に染め抜け。
剣を握る者も同様だ。
教育に携わる者、部下や他の生き物を使役する者、家族を持つ者、全てにおいて“LIFE”を根本とするべきなんだ。」

頷くものがいた。
口を開いて答える者もいた。

「アミュ=ロヴァの民よ、最後に問う。
“LIFE”を基調とした自身の変革、社会の変革。
それができるか?」

前へ 戻る 次へ
(c)1999-2024 Katsumasa Kawada.
All Rights Reserved.