The story of "LIFE"

第 06 章「使命」
第 03 節「総力戦」

第 14 話
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「ヱイユさん、アミュ=ロヴァの権力の魔性『イル=デュゴス』の本当の討伐は、アミュ=ロヴァ市民が、若い人たちが、本気になって国を変えたいと願うところからしか始まりません。
私たちで奴の力を抑えておき、街の人たちを呼んで来て、悪魔と決別する一撃を浴びせてもらうのです。」
「それがいいな。
じゃあ、5人で『方陣』を作ってくれ。
俺が真上から魔法を使う。
そしてソマ、街に行って、一人でも多く、広場へ来させるんだ。」
「うん、わかったっ!!」

動作を封じておくだけなら、ヱイユ一人の力でも十分な相手だ。
しかし、止めを刺す、・・・この国に巣くった「魔性」と決別を果たすためには、市民総勢の意思の力が不可欠だとヤエは言う。

15分もすると人々が集まってきた。
皆、あまりの醜さ、おぞましさに、顔を顰(しか)めながら魔物を眺めたり、顔を背けたりしていた。

イル=デュゴスは絶えず両手の力で起き上がろうとしたり、足をバタつかせて地面を揺らしたりした。
それを更なる魔法力で押さえ込むのが五芒星の方陣を形作っている5人とヱイユの役目だ。
1時間程度ならば優(ゆう)に持たせられるだろう。

だが彼らの一人でも力を緩めるならば、方陣が欠けたり、増幅されているヱイユの魔法力が弱まったりしてしまう。

市民を集めてくるといっても、すぐに場を離れられない者も当然いるにちがいない。
長丁場を覚悟して、6人の術士がそれぞれの役目に徹する必要があった。

押し寄せてくる人々を見るにつけ、ヱイユやヤエにしても、話したいことは山ほどあるが、方陣を形成しながらの片手間で話し込めるほど、この魔物を侮ることは決してできないのである。

「あれが古都に巣くった怪物ね・・・。」
「なんて気持ち悪いんでしょう。」
「魔法はいつ、撃ち込んでいいんだ?」
「武器を投げつけてもいいのか!?」
「ねえねえ、石を拾っておこうよ!」
「あんなに大きなの、本当に倒せるのかしら?」
「死んでもよみがえりそうだよな。」

犬を連れてきた人がいて、あちらこちらでワンワンと吠える声が聞こえだした。

写真家や新聞記者が魔物の写真を撮っている。
おそらく、現像しても実体は映っていないだろう。

30分が経ち、1時間が経った。
最初に来た人々はそろそろ帰ろうとするかもしれない。

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