第 06 章「使命」
第 03 節「総力戦」
まだLIFE騎士団が到着する前のある日、テビマワ侵攻に失敗した内衛士団の元・第二司隊ルヴォンの裁判で激昂したせいで体調を崩していたハフヌ6世は、アミュ=ロヴァの作戦を妨害したという囚人タフツァに面会すると言い出した。
「無期だと!?
そんな者を、死ぬまでアミュ=ロヴァに置いておくつもりか。
早く殺せばいいものを!
判決は支持しない。
儂(わし)自ら裁いてくれよう。」
顔色は青黒く、人望もない、横暴なこの法皇が会うと言っているのだ。
あまり激しく怒ると倒れることがある。
面会には誰も反対できなかった。
午後、タフツァはちょうど得意な「エネルギー放出」の労役に服していた。
そこへ突然、獄吏が荒々しく入ってきて怒鳴り散らした。
「気味の悪い野郎め!
計測器が壊れたらどうしてくれる!?
お前の罪は到底償えるようなものではないが、法皇様がじきじきに罰せられるそうだ。
さあ、こっちへ来い!!」
無理やり腕をつかまれての連行である。
今いる場所で、できる限りの誠意を示そうと懸命になっている彼を罰するとは。
背中を蹴られて扉の中に通されると、側近2人がタフツァの両腕を押さえて身動きできないようにした。
そして、目の前に立っているハフヌ6世が杖を振り上げ、一撃、二撃、三撃、・・・と滅茶苦茶に殴打したのである。
最後に胸を蹴られた。両腕が離されたため、後ろへのけぞると、魔法で体を浮かされて、タフツァは後方の壁に叩きつけられてしまった。
「貴様、誰が何と言おうと死罪だからな!
この人殺しめ!!
何度目の法罰で死ぬか、楽しみだわい!」
“LIFE”の法理を知悉(ちしつ)していながら背いている、諸悪の根源のような男が、私刑を指して「法罰」とはよく言えたものだ。
法皇が退出する際、側近の一人が獄吏に囁いた。
「法皇様のご命令だ。
いつもより手を抜くようならば加減はいらない、死んでもいいから鞭打て!」
「はっ、お任せください。」
しばらく気を失っていたタフツァの横面を、獄吏が力いっぱい打擲(ちょうちゃく)して起こそうとした。
額や頭部からは血が流れていた。
その彼の、やっと意識を取り戻しかけた胸倉をつかんで引っ張り上げ、眼前に睨み付けながら獄吏は叫んだ。
「汚い血をばら撒きやがって!
小僧め、力が有り余っているか!?
いつも手を抜いていたんだろう。
次にごまかしをやったら、ただでは済まさんぞ!!」
これでまだ飽き足らず、獄吏はふらついて立てないタフツァの顔面を殴り倒し、元来た扉の向こうへ蹴飛ばし、閉まる戸を更に蹴った。
あまりの屈辱に、涙が止まらなくなったまま、彼は頬を押さえて仕事場に戻っていった。