The story of "LIFE"

第 06 章「使命」
第 03 節「総力戦」

第 03 話
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オフサーヤ宮殿では、法皇ハフヌ6世が業を煮やしていた。

ここは特権階級化された高位魔法使いたちが住む豪奢な建造物であり、古都アミュ=ロヴァの議会政治の中心地でもある。

庭園と1階にはいつでも都兵が配備され、市民は中に入れない。

2階が枢機卿の会議場になっている。

そして3階は、聖職者という名の、貴族たちの生活空間なのである。

宮殿の後方に建てられた2つの塔が獄舎で、男の囚人と女の囚人は別々に収容する。

向かって左側の塔に幽閉されているタフツァは、この日も朝6時までに服役の準備を済ませ、格子のついた窓のある受け渡し口から食事をもらってきた。

罪が確定するまでは身柄を拘束されただけだったが、裁判の判決は彼に無期限の服役を言い渡したのだ。

粗末な朝食は彼の体力に見合わない。
昼過ぎまで、塔の最上階から地下まで掘られた円筒状の井戸で、上層部のタンクに水を汲み上げ続けなければならなかった。
塔内の飲用水も水洗便所の水もこれで賄(まかな)う。

同時に滑車の回転によって電気を作っているらしい。

14時、昼食の時間は30分だけだ。
午前の労役は、鞭(むち)を持った獄吏が歩き回っているため休めず、毎日かなり消耗させられた。

腹は相当減っていても、多めに与えられた雑穀合わせの食事はとても不味(まず)く、過酷な労働による吐き気から、食べきれない場合は夜のために残しておくのが常だった。

午後になると、この国で大半を占めるのが魔法使いであるように、魔力を持っている者には、エネルギー放出という役務が課された。
つまり囚人は魔力を吸収する「オーブ」を両手で押さえながら、5時間も魔法を放ち続けるのである。

飛び抜けて魔力の強いタフツァにとって、オーブを破壊しないよう加減する必要もあったため、午前中の水汲みとは対照的に、楽な仕事と言えた。

ただ、術者の供給量が予め計測されているので、それを下回れば獄吏に打たれるはめになる。

タフツァは体が楽な分、この役務は獄中に在っても魔力を鍛えられる方法であり、放出した魔法エネルギーは人々の生活に役立てられると知っていたので、自ら配分をして、きつめの供給を行うようにしていた。

得意な仕事で少しでも役立てることを示せば、シェブロンの弟子はなかなか立派だと評価を覆せるかもしれない。
師と“LIFE”のために褒められることを思い浮かべると、苦しい労役の中でも微笑がこぼれた。

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