The story of "LIFE"

第 06 章「使命」
第 03 節「総力戦」

第 01 話
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世界は、国や地域ごと、皆別の問題に対処していると思われたが、実は、同じ一つのものと戦っていた。

侵略国家との抗争然(しか)り、危険勢力との武力衝突然り、隣国との戦争もまた然りである。

守るべきもののためならば、侵略者と殺し合うのが正当か。
国民の暮らしを脅かす危険勢力を、葬り去るのが正当か。
覇を競い、自国のために他国を討ち滅ぼすのが正当か。

否、人々は一様に、同じ問題に対して、まさに同じ過ちを犯そうとしていた。

“LIFE”を基調とした人間教育の実践者であり、過去・現在の魔法の用途に異を唱える者であり、万人が等しく生命の内奥(ないおう)に秘める“尊厳性”を、一人また一人と開花させることによってのみ社会を変革しようとする、革命家、そして指導者であるシェブロンは、未だ流刑地ルング=ダ=エフサに在った。

彼と弟子たちがその気になれば、孤島からの脱出など、いとも簡単なことだっただろう。

なぜ大陸へ舞い戻り、国家の過ちを説き、弟子の戦いを指揮しないのか。

正しい人を投獄した者の罪の重さは、囚人が脱獄によって生き永らえた場合よりも、彼を獄中に殺してしまった場合の方が著しく現れるものだ。

つまり、人々の安全を守るべき国法を犯すことなく、最後まで刑に服することで、悪人自身の生の上に、犯した罪の報いを厳然と示しきり、何が善で、何が悪か、誰もがはっきりと分かるまで、とことん争ってやろうという、一見穏やかなようで、あまりに苛烈な徹底抗戦、すなわち革命者が取り得る最強の戦法こそ、「非暴力・不服従」なのである。

それぞれの国、それぞれの地域は、紛争を解決するために、過(あやま)つ準備を整えようとしていた。

これら、最も危険な場所へ進んで飛び込み、人々の先頭に立って、全ての人の正しい未来を切り拓こうとする者たちこそ、魔法革命家シェブロンの愛弟子たちであった。

師の正義は、弟子の戦いによって示す。

彼らは離れた場所にあって、同じ誓願、同じ祈りで強く結ばれていた。

最初の舞台はレボーヌ=ソォラ。
世界のどこよりも早く、「共存」か「絶滅」かの、二者択一を迫られた国だ。

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