The story of "LIFE"

第 06 章「使命」
第 02 節「春暁(しゅんぎょう)」

第 20 話
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ちょうどファラやフィヲが生まれた頃、そう、あの事変から、16年が経つ。

リザブーグ領ディスマの封印が解き放たれ、半年間ほどは大空に黒い翼の悪魔どもが充満して、一時、王国が滅んでしまった。

死滅の暗黒の日々、地下に隠れて抵抗する人々がいた。

その後、建国祝いで賑わった城下町は反乱を忘れたかに思えたが、暴君ディ=ストゥラドの即位による圧政で、地下勢力は再び運動を始める。

LIFEの一行が王国との衝突を避けながら、味方を増やしたり、人を育てるために懸命だった当時、諜報活動を行って他国に救援を要請するなど、社会体制の変革を望む人々がいた。

長い歴史を見ても、王政に逆らった者は殺されるか、断崖の孤島ルング=ダ=エフサに流されることが多かった。

流刑地から戻ってくるのは、死後、名誉が挽回された者の名前だけで、実際は送られたが最後、死んでも生きても大陸の土を踏むことはなかったのである。

住み慣れた土地に帰ることはできない。
絶望して死んでいく者が大半だったが、過酷な自然環境を生き抜き、他の流刑囚の集落に辿り着く者もいた。

島で生まれて育つ、反王政主義者の子孫もいた。

そしてディ=ストゥラドの、短くも苦しい圧政時期、過去に例がないほど、多くの者がルング=ダ=エフサに流された。
反乱分子は男性に限らず、女性もいた。

両親が流刑になって、罪のない子供が同行するということもあった。

閉ざされた環境で、貿易もない、流通もない。
文明からの恩恵も得られない。

しかし、リザブーグの反乱兵や革命を志した人々の末裔は、島の試練と戦いながら、確かに息づいていった。

目の前に開ける農村地帯に、シェブロンとノイは、これは夢ではないかと考えた。

木の車を引いている農夫、畑を耕す婦人、植物を採取する少女、水を運んでくる少年。

外から来た人間を初めて見るという子供たちは、仕事を放り出して逃げていった。
その様子を見て、近づいて来たのは老人だ。

「リザブーグから来たのかい?」
「はい。
驚かせてしまったようで・・・。」
「ここは元囚人たちの村だ。
といっても、本当に罪を作ったのはワシらではない。」
「そうでしょう。
王国に根深い魔性が、権力者を狂わせるのです。」
「帰ってこいと言われても、誰も帰りはしないだろう。
あなたがたは、帰りたいか?」

シェブロンは、各国で起きている戦乱を収めるには“LIFE”による以外ないと語り、2つの大陸で奮闘している教え子たちに、全て背負わせるわけにはいかないという心情から、きっと帰るつもりだと言った。

この場合、ノイはただ相槌を打って聞いているしかない。

「大したもんだ。
魔法使いの先生と、・・・あんたは騎士か。
それなら、いつ帰れるか分からないことだ、村で働いていくのがいい。」

春の陽気も暖かくなって、シェブロンは農耕と研究に明け暮れ、ノイは力仕事に汗を流した。
相変わらず小竜リールも一緒にいて、時々アーダと交信するために飛び立ったり、普段は村人のためにもよく動いた。

ルング=ダ=エフサでは魔法が使えないため、子供たちは、シェブロン先生は一体何の勉強をしているのかと笑ったが、老若男女、新しい村人が増えたことを心から歓迎してくれたのである。

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