第 06 章「使命」
第 02 節「春暁(しゅんぎょう)」
LIFEの一行にはライオンのドガァや、魔法で捕らえてあるにしろファラの月狼ヴィスク、ヱイユの分身である灰竜アーダなど、人間と心を通わせる動物の仲間たちがいる。
今、シェブロンの元へ遣わされた小竜リールもまた、言葉は解さなくても、本当によく動いてくれた。
特に二人が驚いたことは、魚や貝、鳥など、自分の食糧とは別に獲物を捕ってきてはノイに届けてくれることだ。
このおかげで食物調達の労力がずいぶん減った。
ルング=ダ=エフサに来てから、食事が摂れるよう、朝から晩まで動き回っているような日々だったのである。
それからリールは倉庫の番まで自ら務めた。
一見、自分で獲った食糧を守っているようにも思えるが、これはシェブロンとノイのためにやっているのだ。
風雨を凌がなければならない夜など、洞窟で寝泊りする時は、以前ならノイが寝ずの番をした。
だがリールはコウモリを捕食するため、ノイも安心して休めるようになっていった。
社会的にも、人間としても、悪いことをして流刑になったのではない。
生きとし生きる全てのものの“LIFE”ために、一身に受難したのである。
同じく“LIFE”を守護する使命を自覚したかのように、小竜リールはシェブロンとノイの生活を守り、助けてくれた。
愚劣な権力者も、陰険な謀略も、最高善である“LIFE”を持(たも)つ主従から、生き抜くすべまで奪うことはできなかったと言ってよい。
農作物は育て続けるにしても、島を探索する時間が取れるようになったわけだ。
南東から北西にかけて横たわるルング=ダ=エフサで、最初に船が着いた場所からわずかな区域、南東のごく一部だけで暮らしてきた彼らは、次第に北西へと歩みを進めていった。
島の、ちょうど真ん中辺りの区域まで来ると、以前、人々が住んでいたと思われる集落の跡が見つかった。
「これは村だな。
大勢の人が生活していたのだ。
それが、いなくなってしまったのか、あるいは・・・。」
「居住地を変えただけかもしれません。
言葉が通じるかどうか、まだ島にいるならば、ぜひとも会ってみたいですね。」
住民の手がかりは、北西へ行くほど多くなり、やがて自然物とは思えない果樹園や田畑、ついには住居の集合地帯をも見つけることができた。