第 06 章「使命」
第 02 節「春暁(しゅんぎょう)」
小竜リールは、ソマからヱイユが預かった手紙を携えていた。
『・・・フスカでパーティを分けられた時、初めて先生と別行動のご指示でしたので、今回はリーダーのタフツァを補佐するようにと仰いましたように、実際、タフツァにばかり頼ってしまい、先生にも彼にも甘えていた自分が悔やまれてなりません。』
シェブロンはこの箇所を読んで、彼女にきちんと思いが伝わったことを知り、胸が熱くなった。
女性の力を借りることなく女子を育て上げるのは難しい。
もしムヴィアが生きていたら、ソマは甘えられなかっただろうし、それでもシェブロンに対する甘えが出る時は厳しく教えてくれたに違いない。
同年代のタフツァには頼ったりせず、自立して、彼を補佐してくれるかもしれないと期待したが、やはりソマはまだシェブロンの名代としては力不足のようだ。
そのことに本人が気付き、今後どう変わっていこうとするのか。
『・・・私も牢に入れられて、初めてこれが自分の戦いであると知りました。
必ず、LIFEが正しいということを証明してここから出、一日も早く先生の元へ参ります。』
傷ついたタフツァを、男の憲兵が取り囲んで連れ去ろうとした時、ソマは毅然と抵抗したという。
投獄という受難は、きっと彼女を強くするだろうと信じた。
もう一通、上手くない字で書かれた手紙はヱイユからのものだ。
シェブロンは、まさか彼から手紙をもらえるとは思っていなかった。
『・・・私の手でお届けできないことをお許しください。
ルング=ダ=エフサに長く居ていただくわけにはまいりません。
LIFE騎士団の作戦を成功させ、タフツァとソマを助け出します。
そして悪魔結社マーラとの問題に決着し、先生とノイさんの帰還を訴えます。』
少々乱暴だが、ヱイユもよく育ったものだ。
彼は目を細めて喜んでいた。
小竜リールの労をねぎらって、明日の食事のためにとっておいた食物を与えると、返事を書き始めた。
大きな二枚貝の殻に、持参を許された愛用のペンで一文字一文字、丁寧に記していく。
『・・・ソマ、ありがとう。
ヤエさんを大事にしなさい。
私のことは心配いらない。
レボーヌ=ソォラの発展に尽くしてきてほしい。
貴女の活躍に期待している。』
もう子供ではないし、子供扱いするのは正しくない。
心を込め、あえて「貴女」と書いた。
更に、本人に届くかは分からないが、ヱイユにも書いた。
『・・・人にはそれぞれ使命というものがある。
皆が自由を奪われたのでは困る。
きみがタフツァ君やソマを励まし、ファラ君に進むべき道を示してくれたことは、まるで私に分身がいるかのようだ。
いいか、私を助けるために戦うのではないよ。
苦しんでいる人がいる限り戦い続けるのだ。
敵をも救っていくことだ。
頼んだよ。』