The story of "LIFE"

第 06 章「使命」
第 02 節「春暁(しゅんぎょう)」

第 16 話
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シェブロンは島原生の根菜を鍋にかけ、ノイは魚を焼いて夕食にした。

「あと一か月ほどすれば作物ができ始めるさ。
市場経済の中で生きてきただけに、自給自足というのは大変だな。
食事が偏らないよう、必要な分だけ、いろいろなものを獲っておいで。」

ノイは魚を半分ずつにしようとしたが、シェブロンは辞退する。
ならば2匹はいただきますのでと言うと、それならばありがたくご馳走になるよと受け取った。

ルング=ダ=エフサに生息する動植物について、予め調べておいたシェブロンは、狩りに出るノイにも様々な話をし、食用となるものとそうでないものの見分け方など教え込んでいたのである。

食にありつけたことへの感謝の意を表してから箸を付けるという考え方があるが、彼らも毎回の食事を無駄にせぬよう、流罪の身であっても、何ができるだろうという問いかけを忘れなかった。

日中はぽかぽかと暖かい日が多くなってきた。
しかし夜はまだ冷える。

雨が降れば洞窟に入るより他にない。

騎士であるノイは、他の動植物によってつなぎ得ているこの“生命”を、シェブロン博士の護衛のために使ってこそ価値があると思っていた。
彼自身には“LIFE”の研究を進めることも、師の教え子たちを育てることもできないかわりに、博士に生きてもらうことにより、“LIFE”の実現、ひいては未来への弟子の育成が可能となるからだ。

シェブロンは、ノイの献身について、自分という有限な存在のために捧げられたものではなく、“LIFE”という、彼の死後も永遠に続いていく、大宇宙に普遍的な向上律ともいうべき尊厳性のために捧げられた、限りなく尊貴な生き方であると、心から敬っていた。

ただ一つ残念なことは、ノイにまだ家庭を持たせてやれないことである。


ある日、仔竜のように小型だが成獣の、一匹のドラゴンが、朝食をとっていた二人の頭上をゆらゆらと旋回しながら降りてきて、シェブロン博士の手の平に止まった。

翼は蝶のようにカラフルで美しい。
ノイも、害意がないことを見て取った。

それはヱイユが遣わした、灰竜アーダの眷属で、「リール」と名付けられた竜族の仲間だった。

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