The story of "LIFE"

第 06 章「使命」
第 02 節「春暁(しゅんぎょう)」

第 15 話
前へ 戻る 次へ

魔法使いファラの一行がワイエン列島に至り、ミルゼオ寄りの西側地域から、大セト覇国寄りの東側地域へ入った頃、ようやくLIFE騎士団はスヰフォスやサザナイアの故郷・ビオム村に到着した。

その同じ時、断崖の孤島ルング=ダ=エフサでは、シェブロンとノイが畑を耕すなどして、厳しい自然環境の中、奮闘を続けていた。

LIFEに同情的な旧リザブーグの人々の好意で持たせてもらった作物の種や、野生の食用となる植物などを育てるのだが、すぐに食材が得られるわけはない。

一日中、畑仕事で汗を流すシェブロンと、午前中だけ一緒に農耕した後、午後は狩猟や漁猟に出かけるノイの生活があった。

シェブロンは動物や鳥たちにも親しく声をかける。
ほとんどは空腹で殺気立っているのだが、ある意味、それが生きるということではないか。

動物たちの害意は、人間のそれとは違って、生きる糧を得るため・安全な生活圏を守るためだけに牙を剥く。
彼は腹が減っている動物たちに出会うと、エサをやるよりも、自分で取りに行くよう叱咤した。
また、襲い掛かってくる動物に対しては、相手よりもこちらの方が強いことを教えてやった。

それが自然界の掟だからである。
甘やかしたり、楽に生きる方法を与えたりはしない。

その気になれば生きていくのに必要な食物を得ることなど造作ないからだ。

動物は、彼にとって対話の相手ともいえた。
自ら手にかけて糧にしてしまうには、あまりに親しい存在だった。

しかしノイの場合はどうだろう。

強靭な騎士の肉体は日々鍛えられていくし、正しいものを守るためには、この先ずっと、強くなっていかねばならない。
自分より強い敵に遭って敗れ、守るべきものを守れずに終わるとしたら、彼は騎士道に悔いるに違いない。

シェブロンは、自分のためには、動物であれ鳥であれ魚介であれ、食肉は必要ないと言った上で、ノイ自身についてはそうした力も栄養も必要であろうから、狩猟に出掛けるようにと薦めた。

ただでさえ、食うか食われるかという自然界に生まれ、そこに生き、死んでいく動物たちである。
人間の蛮行に歯止めをかけて改めさせ、共存の道を開くLIFEの、護衛騎士の血肉となるならば、動物単独では為し得なかった大目的にまで手が届く。

夕方になって、ノイは魚を3匹、獲って帰ってきた。

前へ 戻る 次へ
(c)1999-2024 Katsumasa Kawada.
All Rights Reserved.