The story of "LIFE"

第 06 章「使命」
第 02 節「春暁(しゅんぎょう)」

第 12 話
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「ファラ殿は我々に同行されていない。
行き先は定かではないが、ミナリィ港から船に乗られたことだけは分かっている。」

こう言いながら、果たして煙に撒けるだろうかと考えた。

「仲間ならば、お前たちの誰かは知っているはずだ。
軍師のスヰフォスならばどうか。」

総司令官に会うというのは、前団を追い越し、先発隊にまで迫ることを意味する。

それは困る。
ビオム村の住人を巻き込まないとも限らない。

「ファラ殿と戦うつもりか。
それならば、死を覚悟することだな。」

少し脅しをかけてみた。

「ほう、私が剣で死ぬか!
その少年は、命を奪うのか?」
「お前が執拗に攻撃を仕掛ければ、最後は果てる以外ない。」
「面白い!
ますます会いたくなったぞ。
それで、行き先は知らないのだな?」

ファラが剣と魔法に秀でているのはよく見て知っている。
すでにLIFE騎士団の誰よりも強いだろう。

しかし、目の前にいる得体の知れないこの男が、ファラを狙って東方の大陸まで追いかけていくとしたら、またもしものことがあったら、と戸惑ってしまう。

レヂョウはツィクターを知らない世代ではあるが、その名声だけは聞き及んでいた。
そして、同じ武に生きる者として、ファラの武運を信じて賭けてみるしかないと思った。

「分かった。
教えてやろう。
ロマアヤへ向かわれたのだ。」
「それはますます面白い!
安心しろ、もうお前たちの後を追ったりはしないさ。」

馬まで黒いとは、マーラの黒ローブと何か関係があるのだろうか。
LIFE騎士団を追えばファラに会えると期待してここまで来たのだが、いないと分かれば馬鹿らしくなったのだろう。
ずっと速度を落として移動していた黒騎士は、馬に飛び乗ってフスカ港の方角へ駆け去ろうとした。

「待て、名前は何という!?」

黒騎士は、もはや振り向きもしなかった。
どこかの国の騎士でもなく、マーラの術士でもないとすると、単純に剣技を競いたいだけなのだろうか。

今後の行軍で、彼の特徴を話せば誰か知っている者に会えるかもしれない。
レヂョウは戦闘を交えることもなく、一応の役目を終えられたので、コダーヴ市に戻ることにした。
馬車を置いたまま、御者を待たせているからである。
各自の馬も返さねばならない。

彼は黒騎士についての情報があれば、行く先々で聞き込んでおく責任が自分にはあると思った。

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