The story of "LIFE"

第 06 章「使命」
第 02 節「春暁(しゅんぎょう)」

第 10 話
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追跡者の野営はとうとう見当たらず、市場の住居か宿に泊まったのではないかと推測された。
午前5時、先発隊が出立していく。

スヰフォスはレヂョウに言った。

「夜通しの警護、苦労をかけたな。
君自身と隊員が無理を重ね過ぎぬよう、解決した後は十分に休む時間を取ってくれ。
ビオムの到着は一日遅れても構わない。」

7時前から日が差してきた。
前団の隊員たちが起きて朝食の準備を始めている。

全部隊が寝静まる状態を危惧して警備にあたったが、第九隊をひとまず休ませることにした。
それでも隊長のレヂョウは休めない。

8時過ぎ、就寝の遅かった後団の隊員たちが起き出した。
彼らは前団を見送って朝食をとり、出発の11時頃まで交代で市に買い出しに行く。

隊ごとに状況はまちまちだ。
途中で昼食をとったり、休憩したりという、行程に必要な物資を馬車へ積み込んでおかなければならない。

あるいは燃料、あるいは食糧、偏食とならぬよう野菜や肉、そして水はどの隊も往復しながら用意していた。
騎士たちの装備品は消耗するものなので、公の任務にあたる今回のような場合、旧リザブーグ並びにアミュ=ロヴァからも資金が出されている。

あまり来る機会のない市でもあり、大きな町に着く前なので、商人たちの在庫は充実していて、中には手に入りにくい武器や防具、アイテムにも出会えることがあった。

「欲しかったものを公的な資金で買えるとは、ありがたいな。」
「自前の装備をミッションで磨り減らすとしたら騎士は赤字になる。
使わせてもらおうじゃないか。」

過去の軍隊が国と国のエゴのぶつかり合いから戦争を起こしていたのと異なり、人々の生活を脅かす危険勢力から各地を解放する目的で結成された一団である。
その武器も防具も、また日々磨きをかけている技も、全ては世界の民衆のために捧げられたものであり、更には彼ら自身の尊き“生命”までも、世界のために使っていく。
こう誓って結成されたLIFE騎士団だ。

古来の騎士が、守るべき誰かのために命を賭けた“騎士道”という精神は、“LIFE”思想によって、愛する家族に始まり、やがて全世界の民衆にまで思いを馳せて、その生活と家庭を守らなければといった使命感へと昇華した。

目前に迫る重大な戦役は、悪魔結社マーラとの戦争ではない。
人間の“生命”に巣くう、排他的殺戮性との戦いであり、まず第一にLIFE騎士団の彼ら自身が、戦闘という極限状態の中、相手の“生命”の尊厳性をどこまで信じ抜けるのかにかかっている。

魔法使いファラが自らの武器として「無刃刀」を選ぶ理由に挙げた、相手の“生命”をも守りながら戦うことで、その尊厳性を教えるという精神こそ、LIFE騎士団が実戦で発揮するべき、他の軍隊との明確な違いであらねばならない。

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