The story of "LIFE"

第 06 章「使命」
第 02 節「春暁(しゅんぎょう)」

第 08 話
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確証のない話を続けていると振り回されてしまう。
実際に追っ手の姿を見たのはレヂョウだけであり、彼が引き受けてくれたからには、他の部隊は予定通り動くべきである。

「きみの実力を評価しているつもりだが、もしもだ、凄腕の剣士で、7人でも刃が立たない場合は、どうする?」
「わたしの技は、剣と剣を合わせることではありません。
我が隊は、日頃の訓練を見るにつけ、武器にしろ魔法にしろ、敵から逃げ延びるために力の不足な者はいないと自負しております。」
「ならば一切、任せたぞ。
後団は4部隊となるが、第九隊は作戦を終え次第、ビオム村で合流するように。
このコダーヴ市で伝令用の馬を借りておくのがいい。
何かあったら飛ばしてくるのだぞ。」

隊長たちが会議から戻ると、後団の4部隊は夕食をとり、訓練の後、この日キャンプ場で一番遅い入浴となる。
明日の出発は前団が発ってから2時間後の午前11時を予定しており、その分睡眠時間がずらされている形だ。

別行動のレヂョウ部隊長と隊員6名は急遽、先に休むこととなった。
深夜、後団が寝静まる前には起きて、交代で見張りに立たねばならない。


前団4隊が訓練を終えて風呂に入る頃、後団4隊は夕食を終えて訓練に出掛けた。

バグティムト率いる第八・格闘部隊は力が有り余っているようだ。
近くの川を跳び越すように渡っていくと、各々が森へ駆け入って見えなくなってしまった。

騎士たちは北での戦闘を控えて、実戦で活躍できる機会を今か今かと待ち遠しく思っている。
日中は馬車の中でおとなしくしていなければならず、大いに剣を振るいたい気持ちでうずうずしていた。

ひとたび訓練の場が決まれば、水を得た魚のようだ。
大刀使いのハッボスの部隊は試合形式の打ち合いを、真剣に楽しんだ。
仲間の技や身のこなしに、普段よく目にするものではあっても歓声が起こる。

共に切磋琢磨しながら強くなっていく日々は、真似ることも、応用することも、互いにうれしかった。

ラッツピンの隊員たちは剣(つるぎ)の舞が華麗であり、踊るようにテンポ良く、時にわざと狂わして仕掛けるなど、相手のペースを乱し、自分のペースに持ち込む妙技を競い合った。

大きな盾による押し出し戦法を主とするヌザルムの部隊では、盾や武器は使わずに、レスリングを行った。
LIFE騎士団で最も重量のある部隊である。

体重がある者、背丈のある者と様々だが、小柄でも筋肉質な者は強かった。
隊長を含めて7名であるから、余った一人は休憩を兼ねて軽い運動などして番を待つ。

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