The story of "LIFE"

第 06 章「使命」
第 02 節「春暁(しゅんぎょう)」

第 05 話
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午後3時過ぎ、前団がコダーヴ旅団キャンプ場に到着した。
第二部隊から第五部隊までの4隊である。

御者たちは空(から)の馬車を車置き場に曳(ひ)かせていった。
そこには厩(うまや)と御者たちの簡易宿があるのだ。

各6名の隊員はテントを準備し、市に出て行軍に必要な物資の補充を行う。
部隊長は会議のためにスヰフォスの元へ向かった。

10まである部隊のうち、前半5つの部隊長が顔を揃えている。
ナズテイン、レンガー、ウタック、オルグス、マシンクである。
第一部隊の隊員は皆のテントと荷物の見張りに出た。

「よし、体の具合の悪い者はいないか?」

第二部隊から順に、ありません、という声が返ってきた。

「車に酔った者は?」

各隊に1名ぐらいいるという。
第五部隊長で槍使いのマシンクが答えた。

「想定していたことです。
車酔いの薬も買いに行かせています。」
「馬車ではなく馬に乗れたらな。
武器による戦闘ならば80騎など城から借りてくるところだが、魔法使いばかりを相手に騎馬戦とはいくまい。
訓練を積んでいる騎士が生き残れても、馬が殺されたらかわいそうだ。
アミュ=ロヴァに置いたまま転戦するのも無理だろう。」

レンガーが問う。

「現地で馬がほしい時には借りられるでしょうか?」
「うむ。
部隊間の伝令や、作戦によって要ることもあるだろう。
その場合、馬の数は少なく済む。
・・・では、何か変わったことがあれば話してくれ。」
「森の、機械の警備兵が減りましたね。」
「そうだ。
ゆうべも話しておったのだが、警備兵が野良機体を追うという光景は見られなくなるだろう。
誰もが怪しんでいたように、メレナティレの作り事だったのさ。
おそらくは、ガーディアンの必要性を強調する目的でな。
国民が欺かれて機械を必要と考えれば、今後一層、機械化が進むだろうよ。」

会議はここでの行程の確認と、商人たちが使うキャンプ場であるから幅を利かせないようにということ、また次のビオム村での留意点が話された。

「ミルゼオでは長い間、戦争というものが起こっていない。
リザブーグ王国が昔から、ことあるごとに侵攻を狙っていたが、実際にはできなかった。
北の国境、レボーヌ=ソォラ領内はアミュ=ロヴァの統治下にあって、過去に危険勢力が南下してきたということもない。
今回、我々はLIFE騎士団と言っても、村の者はリザブーグから派兵された軍隊と思うだろう。
わしからも話はしておくが、皆の誠意を示すために、村人の生活区域には入らないことにしようと思う。」

オルグスが頷いている。
彼はLIFE騎士団に加わる前、犬に乱暴してファラにたしなめられた男だ。

「自分も妻子を思えば当然のことです。
自国の軍隊ならまだしも、他国の、それも旧リザブーグ王国の騎士団という悪印象は拭えないでしょう。」

すっかり物分りのいい部隊長になったものである。
人はどのような目的に生きるかによって、善の性質が出たり、悪の性質が出たりする。
だからこそ、人間社会というものは、人の善性を引き出して活かしきれるものへと、正しく形成していかねばならない。

ビオム村でのキャンプは、スヰフォスの家に近い川の土手を利用することに決まった。

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