The story of "LIFE"

第 06 章「使命」
第 02 節「春暁(しゅんぎょう)」

第 04 話
前へ 戻る 次へ

スヰフォスが若いナズテインの隊を選んで自らそこへ加わったのは、最も覚えるのが早い年代の彼らに、今後、騎士団全体の指揮をとってもらわなければならぬ時が来ると想定してのことだ。

幾つかの町や村を通過するにも、滞在するにも、気に掛けるべき事項は異なる。
そうした国の様式だとか人心の理解だとかを抜きにして行軍などできないし、まして味方を増やすこと、協力を得ることはできないと、身をもって知らせておくことが将来の力となるだろう。

『道中、休みなく馬を曳かせる御者は一番に休ませ、前団には先に訓練を、後団には食事を、か。
そして翌日の出発が早い前団の方が、後団よりも早く休める体制にされているんだ。』

物資を渡してすぐに出発すると思っていた彼だが、この分だと、先発隊ももう一晩ここで過ごすであろうことが想像できてきた。

「第一部隊は明後日の早朝5時にキャンプを発つ。
前団は続いて9時に発つ支度を。
そして後団は11時の出発となるから、市に出て物資の調達にあたらせるのだ。」

ここまでがコダーヴ市での動きである。


一夜明けて炊事と朝食を終えた先発隊は、剣の打ち合いをした後、市に出た。
主にリザブーグから北上していく商人たちと、レボーヌ=ソォラから南下してきた商人たちとがここで物資の交換をするらしい。

もう少し北へ、ミルゼオ国の中腹辺りまで行けば、南東のフスカ港への道も交差するようになる。

陸の交易ルートは、食糧が北から南へ、あるいは東から西へと流通する傾向があった。
それがリザブーグ周辺の農地政策により、少しずつ変化してきたらしい。

第一部隊の隊長を含めた7人は、国営の穀物倉庫へ、人力の荷車を持って往復する間、市場の係員に話しかけられた。

「リザブーグは以前、船でレボーヌ=ソォラへ機械を輸出しながら、食糧は輸入に頼っていた。
それが農産物を作るようになって、ここでの取り引きも多くなったのさ。
そのうち王国でしか採れない食物で賑わうと、期待しているよ。」

80人に近い食糧を、2食分、キャンプまで運搬しなければならない。
LIFE騎士団は私設であり、どの国の軍隊にも属さないが、国家と国家の共同作戦という形をとっているため、行軍の費用は旧リザブーグとアミュ=ロヴァの両都市から出資がなされていた。

昼食を摂った後は、穀物以外の食糧を調達し、午後の訓練を行って、大勢が入浴するための水を川から運ぶことになっている。

前へ 戻る 次へ
(c)1999-2024 Katsumasa Kawada.
All Rights Reserved.