第 06 章「使命」
第 02 節「春暁(しゅんぎょう)」
「我々で、明日の昼間に食糧の調達を行う。
全団員の夕食分と朝食分だ。
日が傾いて前団が来たら部隊長を集めよう。
各隊が4人用のテントを2つずつ持っているから、全体で20張にもなる。
このキャンプ場は商人たちのためにミルゼオ国が作ったものだ。
敷地の半分で収まるよう徹底しなければならん。」
ナズテインは言われたことを紙に書き取っていた。
「旅程のメモならばいいが、ミッションではできないぞ。
明瞭な指示を出し、必ず記憶させるのだ。」
剣術の腕は急速に上がってきている。
しかし集団行動の統制となると、慣れないことばかりだった。
「部隊長を集めている間、前団の隊員たちには市へ出て物資の補充を行わせる。
御者は到着順に、まず共同浴場が込み合う前に入らせ、馬の食事、御者の食事、そして旅程を確認したら早めに休ませること。」
コダーヴ市(いち)に滞在する商人たちの動き、御者の動き、前団の動き、後団の動きをシミュレーションするのも追いつかない。
機械的に書き留めて、後から振り返れるようにするのでいっぱいだった。
「前団の隊員が買出しに出ている頃は、ここの商人たちも風呂に入る。
また我々は行軍中であっても技を磨かなければならぬ。
剣の腕はすぐに錆びついてしまうからだ。」
先発隊も夕食後に打ち合いを行った。
それから風呂に入って、慣れない移動疲れのためだろう、皆早々に休んでしまっている。
「後団が到着したら、前団は各隊長を交えて訓練に入ってもらう。
後団はすぐに食事だ。
前団の訓練後、入浴を済まして食事とする。
後団は訓練の後、最後の入浴となる。
こうすることで混雑や、他の商人たちの邪魔をしなくて済む。
ミルゼオは自由市国。
物資や商人の行き来こそが経済の基盤であって、協力を得ようとするならば彼らの動きを妨げないように気を配ることが大事だ。」
そう言われてみると、この日、先発隊の彼らがキャンプに着いてからとった行動を、明日は前団と後団の二手に分かれて、時間が重ならないように調整することで考え出された結論だと分かってきた。