The story of "LIFE"

第 06 章「使命」
第 02 節「春暁(しゅんぎょう)」

第 02 話
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まだ肌寒い早春の夜、LIFE騎士団・第一部隊長のナズテインと、実質的総司令官のスヰフォスは、焚き火を囲んで作戦を練っていた。

最初、ノイから手ほどきを受けた指導員と、技は練達でもLIFE戦術には未経験という団員で構成されていた騎士団だが、スヰフォスが個々の体格や能力に随(したが)って戦法と武器をアドバイスしたことで、彼らの才能は急速に開花していった。

シェブロンが主に若い魔法使いたちを対象に実施してきたLIFE教育の理念と、ツィクターやノイがそれを剣に応用して発展させたLIFE戦術とが、長年、戦士育成に尽力したスヰフォスの経験によって、誰にでも実践可能な哲理となって確立したのだ。

多くは武器の扱いに秀でた戦士や騎士であったが、中には魔法を使えるようになる者もあった。
スヰフォスは、戦術を考える上でも、魔法を取り入れる場合でも、アドバイスを与えるために、ファラの戦闘スタイルをイメージすることが多かった。

彼は、シェブロンの“LIFE”思想を最もよく体現した弟子がファラであると見抜いていたのだ。

次の宿営地は地元ビオム村である。
もし愛弟子の一人、サザナイアがいれば、今回の作戦で彼女の力を借りたくもあった。
しかし、その当人はイデーリア大陸へ、いずれファラたちと合流することになるだろう。

これは彼にとって、願ってもない幸運だった。
人生の終盤で出会った“LIFE”という生き方、戦い方。
その師・シェブロン。

今、最後を迎えるとしたら、後悔することが山ほどある。
過去に戦術を授けてきた多くの戦士たちに、“LIFE”教育という確かな道標(みちしるべ)を、善悪の基準を、何のために力と我が生命とを使うのかといった目的観を、何としても持たせてやりたい。

それが彼の人生における総仕上げだ。
教え子たちに画竜点睛を欠いたまま老いて、死に別れるのはあまりにも辛いことである。

「明日、後続部隊がここへ到着し次第、我々は出発となりますね。」

このナズテインは二十歳を過ぎたばかりの青年で、時期的に直接ノイの薫陶を受ける機会がなかった。
スヰフォスが“LIFE”を認識して最初に育てた教え子と言える。

「部隊長たちは本当によく育っておる。
LIFEの騎士団でなければ、仲間割れをしてもおかしくない連中だった。
それがひとたびシェブロン博士の弟子になると、何が有益で、何が無益であるか、よくよく心得るようになったではないか。
一番驚いているのは本人たちだろうよ。
ただ、任せきりにはできん。
到着後、一度皆で話し合ってから進むことにしようではないか。」

食後に打ち合いとトレーニングをして疲れた団員たちはテントに分かれて休んでいた。
ナズテインが最年少の部隊長であるため、この部隊が最も若いメンバーで構成されている。

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