The story of "LIFE"

第 06 章「使命」
第 02 節「春暁(しゅんぎょう)」

第 01 話
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LIFE騎士団は、リザブーグ(旧王都)特別行政区・北東のゲートからミルゼオ領に入った。
軍の派遣はアミュ=ロヴァからリザブーグ議会への要請であり、メレナティレ城主カザロワによる強行な王国遷都の前夜に慌ただしく了承した形である。

主権を失ったとはいえ、国家の威信に関わる問題だけに、リザブーグとしても派兵を撤回することはできなかった。
そこで、急速に力を付け始めていたLIFE騎士団に依頼されたのだ。

70人ほどの陣容を、行く先々で受け入れてもらうために、すでに先発隊が北上している。

ヱイユやファラから、できるだけ早く王国を脱出するようにと言われていたスヰフォス学師だが、自分一人の身の振り方ならば若い者にとやかく言われなくても決められる。

彼は飽くまでシェブロン博士との信義を重んじ、LIFE騎士団と行動を共にする考えだった。

学師は、先発隊として、ナズテインという名前の部隊長と団員6名から成るパーティに加わった。
大型の馬車での移動となる。

外からメレナティレ王国(旧リザブーグ)に入る場合とは異なり、中立自由市国ミルゼオに入るのは容易だ。

フスカ港を通らず、北北東に進む道は、始めは森だが、ミルゼオ国に入る辺りで山道となる。
リザブーグ周辺の森からは、徘徊するロボットたちが姿を消していた。

「部隊長よ、やはり野良ロボットたちはメレナティレが撒いていたようだな。
王都が移ってみれば、リザブーグ周辺の警備用機体も数を減らしている。
カザロワはまるで治世の能力がないと言わざるを得ない。」
「はい。
機械による軍事路線が彼の政策ですが、リザブーグでは今回派遣の70名の後に、いくらでもLIFE騎士団が育っています。
社会にあって懸命に働く我々ですから、メレナティレとしても邪魔者にはできません。」
「シェブロン先生が20年も前から手を打たれていたおかげだ。
広大な国土も、特別行政区も、周辺の農地も、カザロワの統治が及ばないまま、LIFEとともに力をつけていくのがいい。」

スヰフォスが雇った御者は王政下の者ではない。
剣の腕に覚えのある、彼らの味方なのである。

「レボーヌ=ソォラでも味方を増やすんだ。
そして片付いたら、再びリザブーグへ。
先生とノイ殿のご帰還を訴えねばならん。」

先発隊の役割は、宿所の確保と食糧の調達である。
アミュ=ロヴァに入るまで、おそらく敵対勢力はいないだろう。

最初の宿営地はミルゼオ領コダーヴ市(いち)の旅団キャンプ場になった。
往来の商人たちが使うため、あまり広くは陣取れない。

後続部隊の方も丸一日あけ、前団と後団に分かれて3台ずつの馬車を用意し、旧王都の城下を出発する頃だった。

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