第 06 章「使命」
第 01 節「断崖と絶壁」
タフツァは喜んで、思わず大声を上げるところだった。
「ヱイユ、本当に助かったよ。
ソマは、無事かい?」
闘神と呼ばれる彼も、この盟友の行動、そして仲間思いの優しさには心打たれるものがある。
「ソマより先に、お前に会わなくてはと思ってな。
これから行ってくるが・・・、泣きごとを言われでもしたら、一晩中付き合ってやれるようにさ。」
タフツァは、ヱイユとソマの気持ちの親しさが羨ましくもある。
しかし、同調して笑いながら、後で様子を知らせてほしいと重ねて言った。
「魔法使いファラを覚えているか?
俺やソマが子供の頃、LIFEに偉大な女性の魔法使いと、騎士の夫妻がいた。
その遺児がファラなんだ。
先生のご指示で、リザブーグから逃がし、フスカ港でザンダたちと合流している。」
「彼が、ムヴィアさんのご子息だったとは・・・!!
話だけは聞いたことがあるよ、15年前、リザブーグに現れた魔の国王を封じた方(かた)だって。」
「東に少数民族の村がある。
ムヴィアさんの生まれ故郷なんだ。」
「カーサ=ゴ=スーダか。
魔力に長けた民族のようで。
村を出ることはほとんどないというけど・・・。」
「そう、彼女は民族の風習に従わず、修行の旅に出たらしい。
リザブーグでツィクターさんと知り合ったんだ。」
ヱイユはちらと、反対側の塔の灯りを気にした。
ソマはまだ起きているだろうか。
「驚くかもしれないが、ファラはすでに、『グルガ』以外の魔法を身につけてしまった。
そしてリザブーグでは剣の修行をしていた。
戦闘スタイルも、魔法使いから騎士に変わりつつある。」
「確か、初めて会った時は、3つの魔法だけだったはず・・・!!」
「人間は、訓練することで、弱点を克服していけるのかもしれない。
偏りのない『純円』。
フィヲと組ませたことで、俺たちの想像を越えた存在になりそうだ。」
資質というものがあるのなら、ファラのそれにはかなわない、タフツァはそう思った。
あるいは、タイプの違いだろうか。
ファラはまだ「グルガ」を覚えないという。
タフツァは、全部の魔法は使えないかわりに、敵が魔法陣に描いた文字を見て記憶し、それを真似ることで、自身の発動の中に、平和的に「グルガ」を取り入れていた。