The story of "LIFE"

第 06 章「使命」
第 01 節「断崖と絶壁」

第 16 話
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オフサーヤ宮殿の夜は静まり返っていた。

独房の扉の向こうへと続く通路には番兵がいて、ずっと居眠っているのだろうか、時折、鼾(いびき)声が聞こえてくる。

壁の上に揺らめく蝋燭(ろうそく)の炎は、暗い独房の陰影に動作を与えていた。

数十年来、実質的に支配の及ばなかったザベラムの問題を除けば、古都アミュ=ロヴァは平和な街だったと言える。
今、塔の獄舎に囚われているのはタフツァと、反対側の塔にはソマ、もしかすると二人だけではないかと思われた。

彼らは、ここに入れられて一週間ほどになる。
モアブルグで知り合った魔法剣士ヤエが毎日ソマを訪ね、タフツァにも二度ほど会いに来てくれた。

幸い、持ち物は没収されなかった。
もし魔法で抗議行動に出たとしても、厚く強固な石の牢壁を破ろうとするならば、衛士で取り囲んで拘束できるからだ。

タフツァもソマも、一切抵抗はしなかった。
それで番兵たちは安心して寝ているのである。

愛用の長く頑丈な杖を抱くようにして、粗末な寝台の上に座っているタフツァは、思索に耽(ふけ)っていた。
探偵組織の一員であるヤエが、シェブロン博士の受難を知らせてくれていたのだ。

「断崖の孤島、『ルング=ダ=エフサ』・・・。
あそこでは魔法が使えないという。
ノイさんが同行されたことだけが頼りだ。
ああ、僕は今、ここにいて、何をすればいいんだ・・・。」

両手を伸ばすと、杖も前に傾いた。
弟子として、師を助けに行かなければならない。
任されたパーティのことも心配だ。
フィヲとザンダ、ヴェサは無事に逃げ延びることができたのか。
ドガァの存在は心強いけれども、彼の思考の中ではザベラムで負傷させてしまったことが気にかかっている。

「いつ、出られるだろう。
刑罰を受けることになるかもしれない。
万が一、殺されるとしたら、抵抗するべきか、死ぬべきか・・・。」

“LIFE”のために、自分一人が死ぬことは、シェブロンの弟子として立った時から、どこかに覚悟を決めてある。
しかし、ソマに同じ覚悟をさせるわけにはいかないのだ。

「もしも、・・・そうだったら、・・・死ぬ前に、彼女のことを聞いてみよう。
僕よりは罪が軽いはずだ。
そうだ!
僕が彼女よりも重い罪を被(かぶ)れたことは、博士に任されたリーダーとして、絶対に正しい行動だった。
よしっ、僕は負けるわけにはいかない・・・!!」

タフツァが寝台から腰を上げると、格子の窓の外から、親しく呼びかける声が聞こえた。

「お前は強いな。
・・・安心しろ、全部手を打ってきたぞ。」

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