第 06 章「使命」
第 01 節「断崖と絶壁」
古都アミュ=ロヴァの法皇庁であり、枢機卿会議の中心となる「オフサーヤ宮殿」は擾乱(じょうらん)の渦中にあった。
ザベラムの焼け跡調査中に未だ原因不明の全滅となった内衛士団・第三隊は、予備軍である「都兵」の中から再編されて現地の調査にあたっている。
モアブルグの巡査隊もこれに同行した。
テビマワ侵攻に失敗した第二隊は士卒の死傷が著しく、生還したルヴォン司隊も、そして苦しみの唸り声を上げ続けて意識の戻らないギュバ導師も、もはや戦場に復帰することは不可能だった。
第二隊も近々再編されることは疑いない。
都兵から人員が充てられれば、また新たに若者からの徴集が行われる。
ルヴォンは敗戦の責を問われて裁判にかけられた。
有罪になれば欠席裁判でギュバも断罪されることだろう。
眉間に深い皺(しわ)を寄せ、やつれた表情でルヴォンが訴える。
「モアブルグに滞在していたLIFEという一行が、マーラの拠点である町の古屋敷から敵を誘い出し、テビマワに勢力を与えたのみならず、武力行使に反対して士卒をそそのかしました。
私も一時は首謀者タフツァの言いなりになるところだったのです。
それをギュバ導師が反対されたため、我々は戦いました。
テビマワまで追ってきたタフツァは、あろうことか軍の行動に妨害を加えた。
国家に逆らったのですから、私はそれなりの刑罰を望みます。」
裁判官の声が響いた。
「では、敗戦の責は司隊や参謀にはなく、LIFEの首謀者・タフツァにあるというのだな。」
「もちろんです。
第二隊は度重なる妨害にも関わらず、死力を尽くしました。
LIFEさえ現れなければ・・・!!」
この証言で審議は閉廷となり、先にタフツァに対する尋問が行われることになったのである。
確かに悪魔結社マーラの脅威は国家的危機だ。
奥の席で聞いていた法皇ハフヌ6世は激怒した。
異例のことであるが、タフツァへの尋問に、彼自ら立ち会うと言い放った。
法皇はこの敗戦でひどく侮辱された気分になっていた。
そして軍部に対してこう命じた。
「グルガにはグルガで対抗しろ!
何をぐずぐずしておるのだ!
マーラの術士に関わる者は、女子供も年寄りも、一人残らず根絶やしにするのだ、分かったな!!」
杖で地面を打ち鳴らしながら怒鳴り散らすと、あまりの悔しさに、彼の血の気の悪い赤面が青っぽくなり、具合が悪いのか、側近に肩を借りて屈(かが)みこんでしまった。