第 06 章「使命」
第 01 節「断崖と絶壁」
赤く染まった空、沈みゆく陽光に背中を押されるように、彼は対岸の貿易港を俯瞰(ふかん)している。
いよいよ、ここからは悪魔使いフィフノスが待つレボーヌ=ソォラだ。
ヱイユはソマのことを気にしていたが、決してタフツァのことも忘れていない。
博士の身代わりとなって、アミュ=ロヴァに幽閉されている二人。
今度は自分がLIFEの名を背負い、難敵の脅威から人々を守り戦うことで、無実の罪と分かってもらえるに違いない。
最初は孤独な戦いになるだろう。
二週間後か、三週間後か、リザブーグからLIFE騎士団が来る。
その時までに自身の戦いを決着しておかなければならないし、何とか持ち堪(こた)えておきたい。
彼らが活躍し、LIFEの信条を示しきるならば、必ずシェブロン博士の帰還も叶うはずだ。
また、別行動になったが、危険の迫るリザブーグを脱出し、フィヲらと合流した、弟的な存在のファラも、決して楽な身分ではない。
国を追われ、「亡命生活」の始まりと言える。
この新しいパーティは、フスカ港を出航し、ワイエン列島を通過して、ロマアヤの民が待つイデーリア大陸・南西部へと向かう。
行く手に何が待ち受けていようと、強い絆によって結ばれたシェブロンの若い弟子たちは明るかった。
ヱイユは彼らを頼もしく思うとともに、自身の幼少時代の激しい性格ゆえ、LIFEを飛び出して孤独な放浪生活を送るより他なかった日々を振り返る。
その修行も、この戦いが終われば・・・。
一日も早く各地の内乱を収め、LIFEの一行に加わって、いつか博士が語った、“平和の旅”に、皆で、ソマと一緒に出掛けてみたい。
“希望”は今、ヱイユの中にあった。
ファラやフィヲ、ザンダの中にも。
そしてシェブロンも、ノイも。
おそらくはタフツァも、ソマも。
孤島にあって、独房にあって、暗闇の中に沈み込む夜が訪れたとしても、LIFE師弟の胸奥には“希望”の灯(ひ)が点(とも)っていたのである。