The story of "LIFE"

第 06 章「使命」
第 01 節「断崖と絶壁」

第 09 話
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『おそらく、この竜巻からはそう簡単に出られない。
お前は奴が姿を現したら、見つからないように下へ回っていろ。
俺がエサになっておびき寄せる。
本体をできるだけ削ってくれ。』

幾つも立ち昇っていた竜巻は一本だけとなり、雨は止んでしまった。

しばらくの沈黙の後、ヱイユの真下の海が再び渦を巻き始めて、ゲルエンジ・ニルが水柱を伴いながら飛び上がってきた。

ヱイユから離れて機を窺っていたアーダは、言われた通り、高度を下げていく。

ダメージの癒えた龍王は、竜巻の中を突き進んでヱイユに喰らいかかった。

龍王に飲み込まれぬよう、二重バリアの半径を広げたヱイユは、竜巻を燃え上がらせて龍王の大蛇のような体を焼きにかかる。

『うぬう、よくも!』

このまま燃え尽きるわけにはいかない。
ゲルエンジ・ニルは炎から逃れるために竜巻を収めてしまった。

全身から水を失った龍王は疲弊していた。
ただでさえ、人間と小型の竜を相手に全く歯が立たず動揺しているのだ。

海へ戻れば回復できたが、そこは憐れな畜生界の王、目の前のヱイユを喰らい、我が身に取り込むことしか考えられなくなっていた。

「よしっ、アーダ、頼むぞ!」

先に落下による攻撃を繰り出した時ほど威力はないが、鉱石の固さを纏(まと)ったアーダが龍王の胴体を横殴りに、一撃、一撃と、体当たりする。
いわゆる「パルチザン攻撃」である。

上空へ、上空へ、ヱイユは自らエサとなって龍王を引き付けた。
その間、アーダが横殴りに打ち続けるのだ。

上昇の速度が弱まってきたため、ヱイユも変幻自在の妖刀「ヤマラージ」を引き抜き、龍王の巨大な頭部を攻撃した。

「なぜ蛇身にこだわる?
そんなに長いから、下の方がやられているぜ。」

ゲルエンジ・ニルは憎憎しげに目を見開いて血走らせ、欲しい儘(まま)に我が身を打ち続けているアーダに対して激昂した。

くるりと向きを変え、長い蛇身をくねらせている。

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