The story of "LIFE"

第 06 章「使命」
第 01 節「断崖と絶壁」

第 01 話
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王都としての地位を剥奪されたリザブーグで、メレナティレからの勅令によって行われたシェブロンの流刑、ノイの同行は、LIFEに同情的な旧王都兵たちからできる限りの支給を受けて執行された。

ノイは剣や防具を取り上げられたかわりに、鋤(すき)や鍬(くわ)、フォークといった農具、そして銛(もり)と釣り竿を与えられた。
彼は博士が提唱した、王国周辺地域の開墾、農地の開拓作業にも尽力したため、少々の荒地なら作物を実らせると心に決めていた。

シェブロンの持ち物といえば長老の木でできた杖と着衣、魔法や地理、生物などの本だけであるが、流刑地ルング=ダ=エフサが天然の非魔法場であるため、これらは所持を許されて運ばれた。

また、3日分の油と火打石、ランプを持たせてくれたのは幸いである。

小舟で島まで行った兵士は、洞窟の入江に二人を下ろすと、深く辞儀して帰らなければならなかった。

なぜ、魔法が効力を失っているのか、それは今なお不明であり、海賊が島々を支配した時代にも、気味悪がられて、ここが彼らの根城として使われたことはない。

入江を見回す限り、海まで降りれば魚や貝が捕れそうだ。
しかし、洞窟内には大型の蝙蝠(コウモリ)が生息していて、魔法で身を守れない以上、寝泊りする環境ではない。

緩急(かんきゅう)の入り混じった斜面を登り、時には穴を這い上がるようにして、海面から150メートルほども行くと、午前中にミナリィ港を出発してきたにもかかわらず、真っ暗な空に出た。

なんとか断崖の上まで辿り着いたのだ。

「君には苦労をかけるな・・・。
洞窟付近で風雨は凌げる。
探索は明日にしよう。」

春から夏になると、虫に悩まされることだろう。
土の中で生息している生き物についても、よく調べておかなければならない。

そして食用になるイモなどの植物について知り、作る以前に確保しておく必要がある。

同行を志願した護衛騎士ノイは、シェブロンを休ませるために、自らは寝ずの番をする。
農具を武器に、コウモリたちと戦って一夜を過ごした。

無益な殺傷はしない彼だが、相手はこちらを害そうと狙っている野生動物であり、身を守るためには、向かってくる何匹もの吸血鬼たちをフォークや鍬(くわ)で撃退せざるを得なかった・・・。

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