第 05 章「宿命」
第 03 節「羅針盤」
「おかえりっ。
二人とも、疲れてない?」
「おれは大丈夫さ。
ファラ君は、疲れてるかもよ。」
「あ、いやっ。
疲れてないよ。
のんびり歩いてきたからね。」
夕陽に照らされて、皆、頬が美しく染まっている。
「ファラ君がおねえちゃんに話したいことがあるってさ。」
「ええっ、なにかしら・・・。」
これはザンダにからかわれているのである。
ファラも、大事な人だからこそ、感情にとらわれすぎず、第一に仲間としての絆を作ろうと、思い直した。
「ザンダ君に、LIFEのこと、いろいろ教えてもらいました。
それぞれの戦い方とか、旅のこと、お話ししておきたいんです。」
「うん。
ファラくんしっかりしてるね。
わたし、安心して、ついていきます。」
「じゃあ、おれドガァのご飯と、ばあちゃんに夜どうするか、聞いてくるね!」
フィヲはザンダが気を使ってくれているので、ヴェサのことをかさねてたのんだ。
そして噴水の周りのテーブルに腰掛けようと言った。
正直な気持ちでは、ファラはとても緊張もし、高鳴る胸の鼓動に、言葉も、呼吸もつなげないくらいだった。
フィヲは優しく微笑んで、自分からはしゃべらずに、ファラが落ち着いて話し始めるのをじっと待っている。
木でできた4つの椅子に、向き合うように座らなければならないのか迷い、ファラは正面に座るのをやめて、彼女の隣に、二人とも海が見えるようにして腰をおろした。
ファラはフィヲに見つめられるのに耐えられなかったのでそうしたのだが、フィヲとしてみれば、正面に座ってくれたほうが気持ちは楽だったに違いない。
すごく近くに寄ってしまったので、今度はフィヲの方が動揺している。
テーブルの上に、ファラは無刃刀を置いて、説明しはじめた。
「ずっと、樫の木でできた杖を持っていたんですけど、リザブーグで壊れてしまって。
そうしたら、たまたまミルゼオ国のビオム村で、ぼくに実戦での身の振り方を教えてくれたスヰフォス先生という人と、武器屋さんでばったり出会ったんです。
シェブロン先生にも会っていただいて、LIFEに協力してくれているんですよ。」
「すごいね、ファラくんが来てから、味方がいっぱい増えたのね。」
「王国ではロボットと戦う必要があったので、丈夫な金属製で、対人戦でも相手の生命を守りながら戦えるように、この刃のない剣を選びました。」
「うん、ファラくんにぴったりの武器だわ。
ギラギラの剣とか、ギザギザの剣とか、ぜっったい、似合わないもの!」
「フィヲさんは、危険な相手と対峙したら、どうやって戦うんですか?」
「わたし、あぶないって思ったら、『それ』がなくなりますようにって、心の中で強く思うの。
そうすると、魔法陣を描いたりとかじゃなくて、こう、ぱ~っと、なんだか上手く解決するみたい。」
こう言って無邪気に笑ったので、ファラも腹の底から笑った。