第 05 章「宿命」
第 03 節「羅針盤」
「じゃあ、『ゾー』からいこう。
普段は、どんなふうに使ってるの?」
「ファラ君が山の祠で戦ってた時、宙に浮いてる術士を爆破して、地面に叩きつけてやった。
ロボットだったからよかったけど、人間相手にはあんなこと二度とするなって、博士に怒られたよ。」
「たしかに・・・。
あれで助けられたんだけど・・・。」
「ほかにさ~、『ゾー』なんてどうやって使うんだろう?」
「たとえば、ドガァを軽くして、浮かしてみるとか。」
「ああ。
でもおれ、『クネネフ』とか『トゥウィフ』とか、使えないんだよね。」
「じゃあ、魔法の力で浮かさなくても、ザンダ君が持ち上げてみるのは?」
「おお、ちょっとやってみるかっ!」
ここへ来る道もザンダが背中に乗っていたので、ドガァは一休みしているところだった。
ザンダの手元に描かれた「ゾー」の魔法陣が、ドガァを囲む地面に浮かび上がり、鬣(たてがみ)や尾が、まるで水中にいるみたいに持ち上がった。
「わっは、どうだドガァ、おれさまの怪力で投げ飛ばされたいか?」
胴に手を回してみると、いとも簡単にドガァの体が地面から離れた。
足がつかなくなって慌てる様子を面白がって、ザンダは腹部に手を入れ、更に高く飛ばしている。
「慣れるまで、ちょっとドガァが可哀想かな・・・。
そうしたら、『ゾー』の力加減を調節して、下ろしてあげよう。」
時々からかったりするものの、誰よりドガァが好きなのはザンダである。
ゆっくりと下降させ、地面に足がつくところまで戻してやった。
「二人の連携攻撃としても使えそうだね。
先生とノイさんもやってたよ。
・・・どうだい、両手が疼(うず)いたりしてる?」
「だいぶ気にならなくなってきた。
魔法を使うと、体が熱くなるでしょ?
両手が特に熱い感じはある。」
「それにしても、発動が早いね。
ぼくはまだ時間のかかる魔法があるよ。
『テダンの本』はある?」
「おれ持ってないんだ。
レボーヌ=ソォラでもみかけなかった・・・。」
「宿に戻ったらあげるよ。
『ロニネ』を覚えれば、『インツァラ』でロケットスタートができるかも。」
「わはは、自分に『ロニネ』を張って、『ゾー』で軽くなって、『インツァラ』で吹っ飛べばいいのか!」
ザンダが「ゾー」を使っただけで腕が熱くなると言うので、無理をさせないよう、演習は終わりにして、ファラは日が傾く頃までいろいろな話を聞くようにした。
シェブロン博士に託されたのが早かったので、両親の記憶がないこと、5つ年上のフィヲとはLIFEでずっと一緒に育ったこと、二人にとってヴェサは親代わり、ソマは姉のような存在であること。
18歳の時に弟子入りしてきたタフツァとは、まだ5年ほどの付き合いで、自分より後から魔法を覚えていった経緯もあり、素直に言うことを聞けないところがある、などと彼らしくない述懐も聞かれた。