第 05 章「宿命」
第 03 節「羅針盤」
遅めの昼食は会議となった。
ザンダは水汲みを手伝った後、仲間のライオンにあげたいから食肉を少しわけてほしいと言って、人の食事には出せないような日数の過ぎたものをもらってきていた。
「すぐにもワイエン列島へ向けて発ちたいと思いますが、皆さん、まだここでやることなどありますか?」
「ミルゼオからワイエン国に渡るには、船の便が島の西側行きしかない。
入国してしまえば、メビカの領地からウズダクの領地に入る時、スパイと疑われないように気をつければいい。」
「それは面倒ですね・・・。
どちらの船団とも信頼関係にあるような、中立的な機関など、ないのでしょうか。」
「ウズダクが大セト国寄りの立場をとっている。
シェブロンさんにしてもロマアヤの民の味方をされているから、セトやウズダクと交友関係にはなかっただろう。」
「そこはサザナイアがとても上手だったわ。
メビカは海賊、ウズダクは東側に起こった軍事政府の海軍。
海賊と付き合うには大義名分を分かってもらえればいいし、軍隊と付き合うには彼らの同盟国であるセトに用事があると言えばいいのよ。
ほとんどの人は、ロマアヤという国は滅んでしまったという認識だからね。」
「ではその口実を考えておきます。
身なりなどは?」
「私たちはスパイに疑われたことがないから、きちんと武装していても大丈夫でしょう。
メビカもウズダクも、女の船乗りなんていないもの。」
たしかに、パーティを組んでみると、剣士の装備はファラ、魔法使いと分かるのはフィヲとザンダ、そしてヴェサ。
ライオンのドガァを連れているのを見ても、敵側のスパイと思われることはなさそうだ。
闇の都市ザベラムでドガァが狙われたのは、術士ケプカスの私怨(しえん)だったと考えてよい。
「『大セト覇国』は自然界の怪物なんかも多くて、懸賞金目当てに退治の依頼を受けて暮らす武芸者がけっこういるの。
トラブルを起こしたりしなければ、修行の旅をしています、の一点張りで通行できるはずよ。」
「ワイエン国が抱える問題もありますが、今回は飽くまで通過点として行きましょう。
イデーリア大陸へ渡ったら、弾圧されているロマアヤの民を助けて味方を増やし、ぼくらも本当の力をつけておくべきです。
それからリザブーグ同様に大セト国の軍事路線に対しても、LIFEとして行動を起こさなければならないと思っています・・・。」
「ロマアヤには魔法に長けた人も多くいたけれど、滅亡とともにほとんど命を落としてしまった・・・。
元々セトには魔法使いがいなくて、兵器を駆使して戦う民族。
その彼らと、どうやって戦うかが問題ね。」
レボーヌ=ソォラではタフツァが、いかに仲間を守るかに苦心して、自らが危険に飛び込まざるをえなかった。
今度はファラがリーダーの役割を果たしていかなければならないのだ。