The story of "LIFE"

第 05 章「宿命」
第 03 節「羅針盤」

第 11 話
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宿に隣接する食堂へ、ファラとルアーズを案内する道は、食事を終えて船に戻るワイエン国の水夫たちと、ずっとすれ違いながら歩いた。

迎えに出ているフィヲとザンダは杖を持ってきていないので、それほど目立たなかったが、ガントレットを着用し、無刃刀を魔法使いの杖のように持って、緑色の鉱石が付いた菱形(ひしがた)の盾を腰の左脇に提(さ)げて歩くファラや、鞘に入ったカタールナイフを腰から2本も吊しているルアーズは、一々船乗りたちの目に止まるらしい。

巡回貿易船の乗員たちは皆ミルゼオの水兵だったので、変わった旅装の乗客がいても特には驚かない。

対する彼らは、ワイエン列島国の船乗りでも、西側を根城としている「メビカ船団」の団員であり、その祖先にまで遡(さかのぼ)れば、いわゆる「海賊」の一派だった。

島々の覇権争いを繰り広げている勢力の片一方ではあるが、昔のように略奪など荒っぽいことはやらなくなって久しい。
飽くまでどちらが主導権を握るか、メビカ船団はそこに執念を持つ。

他方の「ウズダク海軍」は、ワイエン列島の統一と大セト国との同盟、ひいては世界戦争という野心まで抱いていた。

ファラはフィヲに、小さな声で、できるだけ早くワイエン列島を経てロマアヤに行こうと言った。
彼らはヱイユから別々に同じ話を聞いている。
彼女も夕べからそのことばかり考えており、ファラと目を合わせて頷いた。

ここでザンダがルアーズの手を引き止めて目配せし、立ち止まっていると、ファラとフィヲが二人だけで歩いていく形となり、後ろで指差しながらいたずらっぽく、声を出さずに笑った。
ルアーズも小声でザンダに同調してみせた。

先を行く二人が同時に振り向いて、悪気なく、「早く」と呼んだので、さっき知り合ったばかりのザンダとルアーズだったが、ついにこらえられなくなって、顔を見合わせ、声を出して笑い出した。

からかわれていることに気付いた二人が赤面して、背中合わせになっているのを見ると、ザンダがルアーズを促して、宿に向かって走り出し、せっかくの食事が冷めてしまうとか、早くと言ったのに何をしているのかなどと、追いかぶせるようにしてもてはやした。

フィヲはザンダを怒って見せようとしたが、ファラが恥ずかしさに逃げ出さぬよう、走っていく二人を構うのはやめ、落ち着いて話しかけた。

「これからの旅は、ファラくんがリーダーになってね。
どんなことがあっても、わたしがたすけるわ。」

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