The story of "LIFE"

第 05 章「宿命」
第 03 節「羅針盤」

第 10 話
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ワイエン国の水夫たちが午前中の仕事を終えて食堂に入ってきた。
一人分ずつトレイに乗せて並べられた料理は、力仕事に従事する男たちの昼食だけあって量も種類も多い。

準備の役目を果たしたフィヲとザンダは、表が込み合っているので裏口から出て船着場に向かった。

町中(まちなか)では、近くに住んでいる者たちが早めの食事を済ませて港へ戻っていく。

「おねえちゃん!
船が、見えてきたっ!!」

フィヲは胸が高鳴って、立ち止まってしまった。

「ほら、最初にファラくんを見つけるんだろ!」
「うん、行こう!!」

波止場には船好きの町の子供たちが集まっていた。
水夫の仕事の邪魔になると大人に怒られても、船が着いたら食事に帰ると言って聞かなかった。

貿易船で、旅客は少ないものの、迎えに出向く家族の姿があった。
また、乗員の中にもフスカの船乗りがいるのである。

汽笛が鳴り渡ると、人々は歓声をあげ、手を振って迎えた。

桟橋までの入場を許されたフィヲとザンダに続いて、子供たちが埠頭の先の方まで走っていった。

「ファラくん!」

左舷の欄干で、懐かしい港町を一望していたファラは、遠くから自分の名前を呼んでくれる優しい姿に気が付いて、胸がいっぱいになった。

小型の船に曳かれながら接岸すると、待ち侘びた桟橋の人々は拍手を送った。
荷物を下ろす前に乗客が降り始める。

「フィヲさん、ザンダくん、無事で・・・。」
「おかえりなさい・・・。」
「早かったじゃんか、おれ、荷物を持ってあげるよ!」

ファラが新たな仲間としてルアーズを紹介する。

「LIFEの皆さんにお世話になります、ルアーズです。」
「はじめまして。
ファラくんの、お姉さんですか・・・?」
「あはっ、そう。
そういう感じよね。」

ザンダがルアーズに話しかけられて照れながら、荷物を持ってあげると言った。
フィヲがファラの荷物を半分持ってくれた。
リザブーグの出入国の時とは異なり、自由市国ミルゼオの入国手続きは簡単で、国籍などの身分証明をするだけだった。

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