第 05 章「宿命」
第 03 節「羅針盤」
黒ローブの術士たちが不気味にケラケラと嗤(わら)った。
そして六芒星の充填が始まった。
「さあ!
狼を召喚するがいい!
どちらの魔力が強いか比べようではないか!!」
これには思わずルアーズが吹き出してしまった。
ファラは下向き加減で首を横に振っている。
ひとつ、ふたつ、みっつ、・・・ファラは素早く魔法陣を立ち上げて、6人の術士を攻撃型ロニネに閉じ込めた。
そして甲板を傷つけない程度に、動けないようゾー(重力)をかけていった。
呆(あき)れたことには、トゥウィフを使ってロニネを破ろうという者もいなかった。
そのまま足下の海へ向けて、彼らの魔力を吸わせるテティムルを発動させた。
六芒星の充填はなくなり、黒の術士たちは魔法を使う余力もないほど吸い尽くされ、戦闘不能状態に陥った。
「あそこの兵士を起こしてくるわね。
お先にもうひと休みさせてもらうわ!」
ルアーズが船室の方へと戻っていく。
「ではその剣を抜いてください。
お相手しましょう。」
ボルフマンはファラに背を向けると、船首の高い所へ駆け上った。
そこでようやく抜刀したようだが、ファラはもう相手をする気がなくなってしまった。
忌わしき魔剣に向かってインツァラ(爆発)を放つと、驚いて吹き飛んだ剣の柄から手を離したボルフマンが腰を抜かして後ろに倒れ、床板に背中を強打したらしい。
「かわいそうに、まるで道化じゃないか。
魔剣なんて早くやめればいいのに。
でも、いいんだ。
LIFEに牙を剥いて、懲りたなら、心から信じられるものは他に何もないだろう。
・・・真面目に修行をやり直そうと思えば、いつでもLIFEに戻っておいで。」
居眠りから覚めたミルゼオの水兵たちは、狂乱するボルフマンを取り押さえ、デッキに倒れている術士らを捕縛していった。