第 05 章「宿命」
第 03 節「羅針盤」
後甲板(リア)の方にもファラの姿は見えない。
そのかわり、城下町で見かけたあの魔剣士が、腕を組んで欄干の所にいるではないか。
彼女も顔を知られている。
できれば関わり合いになりたくない。
闘技場での対戦相手であるファラと、何らかのトラブルになったのではないかと不安がよぎった。
遭遇を避けるようにブリッジへ戻った時、黒いローブを着た男が4人、歩き回っており、扉の前で立ち止まって互いに囁(ささや)き合っていた。
この扉がファラの眠っている倉庫の出入口であり、安心のために内側からカギをかけておいたのだ。
ミルゼオ兵の備品置き場なだけに施錠されているのも道理で、中に少年がいるのではと再三あやしまれながらも危険を回避できたわけだ。
倉庫内ではすでに、交錯する何人もの足音で目を覚ましたファラが、打ち合いの準備を整えていた。
夜中にも関わらずバタバタと無遠慮に床を踏み鳴らすのはおそらく黒いローブの男たちだろう。
ボルフマンの足音は聞き分けることができた。
そしてついさっきから、聞こえては遠ざかる静かな足音がルアーズのものだと気付いて、いずれにしても交戦しなければならないと思われるので、今彼女と合流できるなら心強いと思った。
できるだけ音を立てぬよう、扉の内側まで近寄ったファラは、乱調な数人の足音が去るのを待って、そっと扉を開けてみた。
すると開きかけた扉の向こうから、クスッと笑い声が洩れて、そこにルアーズが立っているのが分かった。
「なによ、あいつら!
・・・もしかして、追われてる?」
「黒い男の人たちにまで探されているとしたら、身に覚えがありません・・・。」
「ボルフマンと会ったのね?」
「ええ・・・。
どうしても戦いたいようなので、応じることにしました。」
「で、そろそろ始まるってことかしら。」
広いフロント・デッキに出ると、全部で6人いる黒ローブの術士たちが、五芒星ならぬ六芒星の方陣を形作るようにして立っていた。