The story of "LIFE"

第 05 章「宿命」
第 03 節「羅針盤」

第 04 話
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午後6時には疲れて船室で眠っていたルアーズは、夜中に目を覚まして、フスカ港へと向かう船の上であったこと、昼間の出来事、横になった凡(おおよ)その時間などを思い出して、まだ当分は朝にならないと知った。

真っ暗な室内にランプの明かりを灯すと、ファラが部屋に戻っていないことに気が付いた。

「私ったら、カギをかけ忘れて寝ていたのね・・・。
あら、彼が締めてくれたのかしら。」

ミルゼオの貿易船に何度か乗った経験から、彼女も深更には船員たちが配置されたまま居眠りしているのを目にしてきた。

部屋を出るにあたって、彼女は防寒着に袖を通し、腰の両側にカタールナイフを提げた。
手にはランプを持って歩かなければならない。

蹴撃用の金具を足の甲と踵(かかと)に装着する。
普段、爪先で歩くので、この武器の足音は立たない。

長旅にはいつもそうするように、着衣の下はウエットスーツである。

旅人が船上で戦闘態勢を解かずにいるというのは不思議な光景ではない。

もちろん、深夜の船内が手薄な警備によって早い時間よりも危険であることは周知としているが、あまり身構えるのもおかしい。

ごく自然に夜空を眺める目的などでデッキに上がる風(ふう)を装った。

甲板には、黒いローブを着た男が二人、フロントデッキの先の方に立っている。
怪しい身なりをしているが、何者かが不明なので、ルアーズは見つからないようにサッと隠れた。

ミルゼオ国の警備兵たちは、昼間よりも数を減らして、壁に寄りかかったり、床に座り込んだりして眠っている。

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