第 05 章「宿命」
第 03 節「羅針盤」
ファラの中で、この時すでに、誰人であろうと、万人の生命の尊厳性である“LIFE”を下に見る者、また“LIFE”よりも優れた何かがあるといった考えから起こる、一念、行動、思想などに、もし出くわしたならば、相手の土俵に上がってでも、その出鼻を挫き、二度とそのような考えが起こらなくなるまで、攻めて攻めて攻め貫(ぬ)いて、邪心を撃ち滅ぼすまで戦ってやるという、阿修羅の如き闘争心が育ってきていた。
『どのような行動でも取るがいい!
お前は、お前が取った行動に対する正確な報いを、その身ひとつに集めて悔やむ時、初めて何が善で、何が悪であるかを知るだろう。』
ボルフマンはファラの左肩を後ろに引くようにして自分の方を向かせ、魔剣の柄に手をかけながら言った。
「ミルゼオ兵どもが眠りに落ちる午前3時、甲板の上で決着をつけようじゃないか!」
ファラはそっけなく頷いた。
二度と愚かな魔剣を振るえないように、粉砕してやろうと思った。
男がくるりと背を向けて立ち去ったのを見て、少年は溜め息をついた。
『なぜ、LIFEと一緒に剣技を磨いて、あそこまで敵意を出せるのか、不思議でならない。
あるいは、ぼくに対して個人的に抱いている怨嫉(おんしつ)か・・・。』
今、午後7時を過ぎたばかりだ。
深夜の3時までは十分に休息がとれる。
朝からの旅程に、彼も疲れを感じていたのである。
部屋ではルアーズが休んでいるので、どこか倉庫でもいい、休む所を探そうと、合鍵で外側からの施錠をし、ランプを持って船内を歩いていった。
貿易船なので、商材が積まれている倉庫で休んだのでは怪しまれたり、疑われたりするかもしれない。
そこで、先ほど兵士が鎧を貸してくれた装備品置き場へ行き、兜やアーマーが転がっている物陰で横になると、静かな室内に安堵して、スヤスヤと眠りに落ちた。