第 05 章「宿命」
第 02 節「“LIFE”を継ぐ者」
布団をかぶり、明日どうなるかも分からず泣きじゃくっているフィヲに、ヱイユは細心の気遣いで、できるだけ優しく呼びかけた。
「ほら、ヱイユだ。
怖がらなくていい。
もうすぐ、ここにファラが来るぞ。
LIFEは大丈夫だ。」
ファラの名前を聞いて心が安まってきたフィヲは、もぐっている理由が、ただ泣いた顔をみんなに見られたくないだけのような気持ちになって、布団の中で返事をした。
「いつ、くるの?」
「今夜は船の上で過ごすだろう。
明日の昼頃だな。」
その晩、数日ぶりにまともな食事が摂れたフィヲは、ファラに見せたくて大事に持っていた「ゼエウの本」を開いて読むなど、にわかに快活さが戻ってきた。
これにはヴェサもホッとし、同い年の仲間ができたことは、大きな心の支えになっているのだと知った。
夕方ドガァと一緒に戻ったザンダは、尊敬するヱイユに会えて喜び、聞きたかったことをたくさん聞いた。
「おれ、ドガァに変身できるかな!?」
「アーダの場合は、メゼアラムの中にいるから変身できるんだ。」
「じゃあ、ドガァは、メゼアラムに閉じ込められるの?」
「ははは、それはかわいそうじゃないか。
別に暴れるわけでもないし、悪さをするわけでもない。
メゼアラムは、手に負えないほどの強大な力を持つ魔獣を、こちらの目的と同化させる場合に使うんだ。」
「アーダって、最初はどんなだったんですか?」
「俺も子供だったが、アーダも仔竜だった。
ものすごい警戒心で、捕まえるのに3時間はかかったかな。」
「よく、そんなにもちましたね・・・。」
「ああ、お互いにな。
それだけ俺はアーダを捕まえたかったし、アーダは俺に怒っていた。」
フィヲが皆に紅茶を入れてくれた。
「お前が元気になってくれれば、あたしは何も心配しなくて済む。」
「おばあちゃん!
ソマさんとタフツァさんが捕まってしまったのよ。
どうやって助ければいいか、ちゃんと考えてよね!」
元は、闘神ヱイユをひどく恐れていたフィヲだが、今回彼がファラの消息を伝えてくれて、二つのパーティをつなぐ役割を示したことで、ようやく仲間の意識が生まれたようだ。