The story of "LIFE"

第 05 章「宿命」
第 02 節「“LIFE”を継ぐ者」

第 10 話
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最もシェブロン博士の理想をよく志したタフツァは、北のレボーヌ=ソォラで捕らわれの身となっていた。
師と弟子が同じ正義に生きて、同じ難に遭うことは、ついに一体にして不二の信念が築き上げられたことを意味する。

そして、衣食住という、師の現実の生命を継ぐために同行したノイもまた、自ら望んで師と倶(とも)にする使命となった。

ソマまでも捕らわれて、誰に任せることもできない、今こそ自分が兄弟子としての役目を果たすのだと誓ったヱイユは、リザブーグ王宮の牢に捕らわれているシェブロン博士に外側から会いに行き、格子の向こうから初めて長年の不肖を詫びた。

メレナティレでLIFE一行が機械兵に襲撃された時も、博士の前にだけはどうしても姿を見せることができなかった。

「この壁を壊してでも、先生を安全な所へお連れします・・・!!」
「君ももう子供ではない。
そんなことをすれば全てが水泡に帰すことぐらいは分かっているはずだ。
教え子たちまでも捕らえられて殺されてしまうだろう。
わたしは法難を受けきる姿を弟子一同に示す。
あとは君が何をするかだぞ。」

ヱイユは激しい感情を、それを上回る理性で抑えて生きてきた。
人前で涙など見せない彼も、師に申し訳なさで落涙して袖でぬぐった。

「タフツァとソマがアミュ=ロヴァに捕らわれています。」
「そうか。
よくぞそこまで戦った。
中途半端な者に難などないからな。」

同年代の二人が、師の受ける難を、半分代わりに受けているのだ。
しかし、彼には彼でなければ果たせない役目がある。

「外護(げご)の務め、いつも助けられている。
ファラ君にしてもまだ心配だ。
最も困難な敵は君に引き受けてもらいたい。」

師のこの言葉で本領の我に返ったヱイユは、博士の若い弟子たちを必ず護ると、胸に手を当て生命の契りを示した。

こうして彼は、LIFEが今置かれている状況と、現在の師の心を伝えるべく、ファラに先立ち、フスカ港にいるフィヲたちの元へ向かったのである。

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