第 05 章「宿命」
第 02 節「“LIFE”を継ぐ者」
冬の終わりの寒空に、雲が広がっている。
ミナリィ港には交代勤務でリザブーグから来ている王国騎士たちに交じって、機械兵も警備にあたっていた。
ルアーズによると、以前に比べてロボットが増えているものの、特別な警戒態勢ではないということだ。
フスカ港で乗客と物資を積み降ろしてルモア港へ向かう巡回船が停泊している。
大きな帆を持つが、機械のスクリューも併用できる。
半島のルモア港は元々、自由市国ミルゼオがレボーヌ=ソォラ南部にあるモアブルグや、更に東方の少数民族地帯へ行くための貿易拠点として発展させたものだったが、ワイエン列島国や旧ロマアヤ公国、現在の大セト覇国なども港の使用を望んだため、それぞれがポートを持って共用してきた。
飛び地としてミルゼオに自治権がある。
したがって、巡回船もまたミルゼオの管轄となる。
だが、ここミナリィ港はリザブーグ領であり、出国するには王国の手続きをとらねばならない。
LIFEの一行がルアーズと出会って入国した時に発行されたファラのIDは回収され、リザブーグ国民であるルアーズは在外証明書にサインをさせられた。
もう10分もすれば船が出てしまう。
二人はデッキに上って海風を浴びた。
ルアーズは上着を羽織った。
「やっと解放されるわね。
・・・あっ、見てファラ君!!」
「あれは、さっきの・・・。」
森の方から荷車が引かれて港に入った。
停車すると、2人の兵士が駆け出して、警備兵に何やら尋ねまわっているようだ。
「ぼくたちを、探しているんですか・・・?」
「そうね・・・。
まあ、来たら来たで、それなりに相手しましょう。」
メレナティレの敗走兵2人に促されて、王国騎士やら機械兵やらが慌ててファラたちの行方を辿っている。
汽笛が鳴った。
家族に送り出された旅人達が、動き始めた桟橋に向かって手を振っている。
「あらあ、残念、出航だわっ。」
入管の役人も一緒になって桟橋まで追って来たが、もう手遅れである。
いかに王国港といえど、船は自由市国ミルゼオのものである。
二人は大はしゃぎで座り込んで姿を隠すと、まだ10代の少年少女らしく、ケラケラと笑い転げて甲板を叩いたりしていた。