第 05 章「宿命」
第 02 節「“LIFE”を継ぐ者」
旅支度を済ませて午前8時にサウスウエストのゲートで落ち合ったファラとルアーズは、馬車に乗り込み、南西の方角にあるミナリィ港へ向かった。
LIFE騎士団の育成のために滞在を延ばしてくれたスヰフォス学師も、2・3日中には出発すると言った。
自由市国ミルゼオの中部よりやや北に位置するビオム村は山間にあり、馬車を乗り継いでも2泊3日ほどの道のりになる。
リザブーグへは、当分帰って来ることはできないかもしれない。
出発に際してゲートへ姿を現したヱイユは、初対面のルアーズと挨拶を交わして、レボーヌ=ソォラに戻る途中、ビオムとルモアにいる彼女の2人の仲間に会ってこようと話した。
ルアーズも「闘神ヱイユ」という名前だけは聞いていたので、彼もLIFEの味方であり、シェブロン博士の門下であると知って驚いていた。
「サザナイアとアンバスは故郷に帰っているの。
私は仕方なく国を出るけれど、二人にはもう少し居させてあげたい・・・。
一筆書きますので、お願いできますか?」
彼女は仲間宛に短い文で、事情があって先にイデーリア大陸へ行くということ、約束の半年後、予定通り二人でフスカ港に合流して来てほしいということ、詳しくは着いたらもう一度、手紙を送るので現地で会いましょうと記し、署名した。
「たぶんな、すぐに来ると思うよ。
とりあえず、その気持ちは預かった。」
今、ファラとルアーズは馬車に揺られている。
リザブーグへ来た時、フスカから乗せてくれた御者が、今回も運よく城下にいて、頼みを聞いてくれたのだ。
「ヱイユさんは、王国もまだぼくらにまで手を回してきたりはしないだろうって言ってました。」
「ええ。
堂々と行きましょう。
もしも何か言ってきたら、何も悪いことはしていないって言い切るの。」
この御者は、客が目的地へどれくらいに着きたいのか、聞くようにしている。
ファラとしては、急かせるつもりはなかったが、やはり焦る気持ちがあったのだろう、御者にしてみれば少し早めの到着を望んでいると分かる答えだった。
しかし、リザブーグ城付近からミナリィ港へ向かう道といえば、トーハの円盤(ディスク)解析結果からも、最も野良機体との遭遇が危ぶまれる地帯である。
折りしも、前方には馬に引かせた大きな荷車が現れ、フルメイルで武装した男が手綱をとって、止まるようにと合図してきた。