第 05 章「宿命」
第 01 節「民衆と国家」
ヱイユから戦闘の手ほどきを受け、博士の教え子である仲間たちの話を聞かせてもらった楽しい一夜は夢のように過ぎ、気が付くとファラは宿の寝床の上にいた。
疲れて眠ってしまったところを、ここまで運んでくれたのだろうか。
ノイは床に就けなかったらしく、壁際に置かれた椅子に座ったまま、寄りかかって休んでいた。
ファラはそっと毛布をかけてやった。
自室の前まで荷物を積んで出発の支度を整えておいたトーハは、いつも通りに寝れたと見える。
午前6時、ゲートが開いて隣町との行き来ができるようになった。
トレーニングジムのあるサウスウエストタウンはルアーズが住む町でもある。
彼女の部屋は1階の裏口にあり、家族を起こさずに呼びにいくことができた。
ルアーズはすでに起きていて、まだ話を聞かされていないのに、持ち物の整理などしていた。
「しーっ。
詳しくは中を見てください。」
早朝なので会話も控えて、いったん別れた。
IDへの管制はどの程度行われているのだろう。
国外へ出る時や、港に入る時など、何らかのチェックがあるのではないか。
「もしも捕まったら・・・。」
博士もノイも、抵抗せずに流刑に服するのである。
狂乱の時代にあっては、最も正しい者の居場所は、獄舎か流刑地であるに相違ない。
民衆にとって、彼らの尊敬すべき人物への迫害こそ、国家の顛倒(てんどう)を認識し得る確かな指標だ。
革命者がどれだけ独りで叫ぼうとも人間の社会は動かない。
試練に揺らぐような意思では、そこに正義は見出されない。
民衆が、生命にかえても立ち上がらずにはいられないもの。
それは民衆のために捧げられた、指導者自身の生命である。
シェブロン博士やノイやトーハ、ルアーズやその仲間たち、スヰフォス学師、鍛冶屋の店主、LIFE騎士団のみんな、それからヱイユ、フィヲ、ザンダ、父ツィクターと母ムヴィア・・・。
ファラがこの旅で、多くの出会いを通して自覚した“使命”。
それは実に、全ての人のために生き抜くことだった。