第 05 章「宿命」
第 01 節「民衆と国家」
焚き火を囲んで、会話する時間ができた。
ファラは、ズーダ(熱)を帯びた旋風を身に纏(まと)うようにして、懸命に衣類を乾かしている。
「いい経験になったか。」
「はははっ。
とても・・・。」
「武器だけの応戦と違って、魔法も解禁となると、お前の本領じゃないか。」
「ずっと、魔法使いとして修行してきましたからね。
剣の特訓はこれからも続けてもらいます。」
「ルアーズさんか。
なかなか恵まれているな。
彼女の仲間からも、きっと得るものがあるぜ。
あとヴェサさんからも学ぶといい。」
「フィヲさんや、ザンダ君も、かなりの使い手のように思いましたが。」
「そう、特にフィヲの素質は計り知れないぞ。
意図的に起こしていない部分の発動があって、潜在意識というのか、あれは他に見たことがないな。」
フィヲのことを話されると照れくさくなる。
初めて出会った時のこと。
旧知の間柄であるかのような、互いに親しい気持ち。
「ザンダもな、さっき言っていた、魔力が強い。
どうだ、答えは出たのか?」
フィヲやザンダのことを思い出して、それがヒントになった。
快活さ、元気いっぱいの生命。
旺盛な、“生命力”。
「“生命力”・・・!!
これを鍛えるには、どうすればいいのでしょうか。」
「元々持っているものもある。
表れ方にしても、人それぞれに違う。
だが、鍛えることは可能だ。」
ヱイユは、ファラが城下町で多種多様な戦士たちと打ち合ってきたこと、それから今後も、たくさんの仲間たちとの切磋琢磨が“生命力”を鍛えてくれるだろうと話した。
「発動にしても剣にしても、自信を持てることは大きいな。
博士の教えに即して正しいという確信。
目の前の相手のために、また万人のために、絶対にこうするべきだという信念。
そうでないと、全力を込められないだろう?」
その通りだ。
自信と実力が具われば「恐れ」に打ち勝つこともできる。
人は萎縮してしまうと力が伸びず、持っているものさえ発揮できなくなるからだ。
更に、短い期間で魔法を身につけてきたけれども、その一つ一つがどのように作用し、どのような力を秘めているか、経験として積んでいくことも大事になってくる。
「とっさの判断力というが、一朝一夕に身につくものじゃない。
幾百千の生命に縁して、一念と一念がぶつかり合う修行の中で、善を志向し続ける意思が作り上げていくもの。
それが判断力といえる。
この点、フィヲはすごいぞ。」
決して戦闘の経験が豊富ではないフィヲが、なぜ判断力に優れるのか。
一つにはヴェサとのやりとりが関係している。
つまり、少女の優しい思いやりの心が、瞬間瞬間に発せられる自他の生命に即して身につけさせたものであったといえるかもしれない。
こうしたフィヲの資質をはっきりと意識して育ててきたのはシェブロン博士である。