The story of "LIFE"

第 05 章「宿命」
第 01 節「民衆と国家」

第 17 話
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ヱイユはトーハとノイには丁寧な話し方をする。

「ノイさん、博士が捕らわれたのですか?」
「元は国王モワムエに請われて顧問役になられたのですが、メレナティレ城主カザロワの来城で、博士が応対されたのでしょう。
南西の孤島『ルング=ダ=エフサ』へ、流されることになったのです・・・。」

ノイは、ヱイユが少年だった頃の血の気の多さを見て知っている。
それだけに、ここで彼が何を言うのか、多少気に掛けていた。

「博士は、LIFEを託して、孤島へ行かれるおつもりでしょう。」
「はい。
流刑では、断崖の孤島の自然環境で生きられない者は、死を待つのみです。
・・・わたしが同行するよう、明日王宮に行ってきます。」
「ノイさん・・・!
そのまま、お二人とも出発になってしまうのでは!?」
「その覚悟で行きます。
騎士団のことは、王国騎士出身の、わたしの同僚たちに頼んでおきます。」
「ファラよ、お前の恩師という、スヰフォスさんのことだが、・・・このまま王国内にいてもらうのはやはり危険だ。
一度帰国するよう促して、自由市国ミルゼオに、リザブーグの動向として伝えてもらうのがいい。」

まだ危険視されていないスヰフォスは馬車でコダーヴ市(いち)を経てビオム村へ戻ってもらおうと話し合った。

シェブロンとの関係が深いファラと、リザブーグ国民ではあるがルアーズは、国内にいるとすぐにも魔手が迫る危険性が高い。
ノイは、二人にできるだけ早くミナリィ港からフスカ港へ逃れるよう、博士からの手紙を見せた。

書面で、トーハには技師の強みとしてメレナティレに入ってもらい、現地で少しずつ味方を増やしておいてほしいとあった。

「あの円盤(ディスク)の解析が済んだぞ。
おそらく、国内の不安を煽(あお)る目的で、メレナティレが意図的に王宮周辺の森に放っている。
奴らは輸出を装ってミナリィ港や国境付近まで荷車に乗せたメカを運ぶが、そこで破壊活動をインプットしたこの円盤を入れて、わざと『不良機体』と呼んでいるらしい。
・・・どれも、目的さえ間違わなければ、優秀なメカなんだがな。」

彼は明日、メレナティレと往復している技師仲間の馬車に同乗して現地へ赴くつもりだと言う。
信頼できる者には城主カザロワの危険極まりない野心を説いて回り、王族による専制の台頭に歯止めをかけるよう、民意を高めてくると約束した。

このような役割は、剣に長けても、魔法に長けても、できるものではない。

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