第 05 章「宿命」
第 01 節「民衆と国家」
自室に篭っていたモワムエが追い立てられてきた。
カザロワの護衛兵は国王の背中を蹴った。
「仮にも我が兄だぞ。
・・・よく見つけたな。」
カザロワは不敵な笑みを浮かべている。
シェブロンは身体の自由を奪われた。
剣の鞘で打たれながら、地下まで連れていかれるようだ。
「・・・きょ、今日は体調が優れぬ。
後日にしてくれぬか。」
「モワムエよ、なぜあんな男を王宮に入れた?
お前が議会に出たなどと、嘘ばかり並べおって・・・!!」
カザロワは剣を引き抜くと、モワムエに自害しろと迫った。
護衛兵が国王の肩に手をかける。
「許してくれ!
王位は譲ろう。
遷都も、好きにするがいい・・・。」
これを聞くと、階下まで響き渡るような大声で不気味に笑ったカザロワは、剣を収めて、王を自室へ監禁するよう命じた。
翌日の夕方、王宮からの使者が国王の勅書を携えてアイディールの宿を訪ねてきた。
ノイが宿に戻るまで、待っていたようだ。
手渡されると、彼宛になっていたが、普通なら王宮へ呼び出されて渡されるようなものである。
そこにはシェブロン博士の筆跡で、次のように記されていた。
「今、レボーヌ=ソォラで古都アミュ=ロヴァと悪魔結社マーラの激しい攻防戦が続いている。
王国から、LIFE騎士団に要請があった。
彼らを北へ派遣し、戦闘を収拾するように、と。
週が明ければ、わたしは『ルング=ダ=エフサ(断崖の孤島)』へ赴かねばならない。
いつ戻るか分からないが、城下町での練兵は継続できることになった。
君には引き続き、騎士たちの育成を頼みたい。」
博士の署名があり、モワムエの印が押されていた。
ノイが異変の全てを察知するに十分な内容だった。
『博士が、流刑地へ・・・!?』
即座に彼の行動は決まった。
騎士団の訓練を、信頼できる誰かに託し、自らは博士に同行するのだ。
それから、手紙の中央が少しだけ厚くなっていることに気付いた。
裏に、もう一枚、小さな紙が貼られている。
「トーハさんをメレナティレへ。
ファラ君は、できるだけ早く、ミナリィ港から国外へ逃がしてほしい。」