The story of "LIFE"

第 05 章「宿命」
第 01 節「民衆と国家」

第 02 話
前へ 戻る 次へ

スヰフォス学師も毎日ジムで過ごしてくれた。
彼は一人一人の試合を見ながら、最も力を出せる武器や防具の種類まで教えた。
ファラの影響か、鈍器や無刃の柄物、中には盾だけでいいという者も現れてきた。

時々ノースウェストタウンの鍛冶屋が訓練の場を訪れることがある。
店主はスヰフォスに頼まれた武器防具を届けて、それが持つべき人の手に渡り、素晴らしい力を発揮するのを眺めては満足そうな表情を浮かべている。
年々減りつつあった鍛冶という職業も次第に復興してきて、彼の見習になる者もいた。

ジムの従業員も、以前ここが賑わった頃より増えてきた。
機材の管理や施設の保守、個人の持ち物を預かったりもする。
昼夜交代制で運営されており、昼間はここで働いた者が夜の時間に訓練へ参加できるようにした。
他の城下町にも施設が作られていく。

トーハは元騎士たちの職の安定の手助けをした。
武器を持つだけでなく、機械の製造に資質のある者がいれば工場で働き口を見つけてやった。
このことは、高齢化が進む技師仲間たちからも歓迎された。

こうして、王国騎士の伝統を“LIFE”戦術へと昇華させようとする試みは町々で受け入れられ、やがて4つの城下町の各所に拳法や剣術を教える教室ができるまでになった。

決して、順調に“LIFE”思想が根付いたのではない。
15年前、ツィクターとノイが冷笑されながら話してまわったことが遠因になっているのである。

時を得て、その芽は急速に伸びはじめた。

前へ 戻る 次へ
(c)1999-2024 Katsumasa Kawada.
All Rights Reserved.